猫は口実
私はまだまだ酔いが足りなかった。
1人で酒を楽しもうと決め、追加注文をした。
追加の酒が卓上に運ばれ、それを口に含んだ。
そして、いつ頼んだか分からない、卓上にあったアジフライを自分の取り皿に乗せた。
その瞬間に、昔実家で飼っていた猫にアジフライを奪われたことを思い出した。
懐かしいなとか浸っている間に、猫について頭の中で何か引っかかった。
猫…。
すると、半年くらい前に行ったバーベキュー大会の2次会のことも思い出した。
そもそも、この会になぜ参加したのかは謎だ。
それは思い出せない。
恐らく、自称友達千人いますって言うタイプの知人からお誘いメールが来て、暇だからって理由だけで行こうってなった気がする。
関係ないけど、普通にバーベキューで良いのに、大会って名前な点も謎だ。
バーベキュー大会自体は人が多かったし、全く楽しくなかったけれど、その後に行われた2次会の方は楽しかった。
2次会では、座敷タイプの広々とした居酒屋で酒を飲んだ。
座席は完全にランダムだったから、参加者全員と話した訳ではない。
偶然その席に集まった4、5人が、みんな気さくで、話しやすい人達だった。
居心地が良くて、つい飲み過ぎてしまったのは覚えている。
その席の中の1人に、印象的な男性がいた。
恐らく40歳くらいで、長い黒髪を後ろに束ね、手入れされた髭がよく似合う人だった。
平たく言えば、イケオジだ。
40歳くらいに見えるってだけで、実際はもっと歳を取っている気がする。
老けた30代だったとしたら申し訳ない。
私の隣に座り、低めの落ち着いた声で楽しそうに話していた姿が、なんとなく記憶に残っている。
その声で、学習塾の仕事をしていると言っていた。
講師なのか塾長なのか、それとも経営の方なのか。
それは分からない。
とりあえず、塾って髪長いの良いんだって、私が勝手に思ったのは覚えている。
そんなイケオジ(名前は思い出せない)はお酒が回ったタイミングでこんなことを言っていた。
『猫を見てる時だけがほんとの俺でいられる…。』
よく分からないけど、何度も言っていたから、同じくらい酔っていた私でも覚えていた。
そう、本当によく分からない。
辛いことがあったんだと思う、癒されたいんだと思うとか、勝手に色々このイケオジに対して思いをめぐらせていた。
ここまで来てようやく思い出した。
なんかメソメソしていたイケオジを見ていた私は、無性にラーメンが食べたくなった。
時期は6月だったから冷麺でも良かった。
私は麺類が大好きだった。
特にお酒を飲んでいる途中で食べる麺類が好きだった。
締めに食べる人が多いけど、私は途中が良い。
そう決めて、店員に何か麺類を追加注文した。
注文したはずだった。
私もかなり酔いが回っていたから、分からない。
でも、ちゃんとラーメンを注文したんだ。
注文した麺類が卓上に届き、食べ始めたつもりだった。
しかし、私が食べていたのは、隣に座っていたイケオジの長い黒髪だった。
1人で酒を楽しもうと決め、追加注文をした。
追加の酒が卓上に運ばれ、それを口に含んだ。
そして、いつ頼んだか分からない、卓上にあったアジフライを自分の取り皿に乗せた。
その瞬間に、昔実家で飼っていた猫にアジフライを奪われたことを思い出した。
懐かしいなとか浸っている間に、猫について頭の中で何か引っかかった。
猫…。
すると、半年くらい前に行ったバーベキュー大会の2次会のことも思い出した。
そもそも、この会になぜ参加したのかは謎だ。
それは思い出せない。
恐らく、自称友達千人いますって言うタイプの知人からお誘いメールが来て、暇だからって理由だけで行こうってなった気がする。
関係ないけど、普通にバーベキューで良いのに、大会って名前な点も謎だ。
バーベキュー大会自体は人が多かったし、全く楽しくなかったけれど、その後に行われた2次会の方は楽しかった。
2次会では、座敷タイプの広々とした居酒屋で酒を飲んだ。
座席は完全にランダムだったから、参加者全員と話した訳ではない。
偶然その席に集まった4、5人が、みんな気さくで、話しやすい人達だった。
居心地が良くて、つい飲み過ぎてしまったのは覚えている。
その席の中の1人に、印象的な男性がいた。
恐らく40歳くらいで、長い黒髪を後ろに束ね、手入れされた髭がよく似合う人だった。
平たく言えば、イケオジだ。
40歳くらいに見えるってだけで、実際はもっと歳を取っている気がする。
老けた30代だったとしたら申し訳ない。
私の隣に座り、低めの落ち着いた声で楽しそうに話していた姿が、なんとなく記憶に残っている。
その声で、学習塾の仕事をしていると言っていた。
講師なのか塾長なのか、それとも経営の方なのか。
それは分からない。
とりあえず、塾って髪長いの良いんだって、私が勝手に思ったのは覚えている。
そんなイケオジ(名前は思い出せない)はお酒が回ったタイミングでこんなことを言っていた。
『猫を見てる時だけがほんとの俺でいられる…。』
よく分からないけど、何度も言っていたから、同じくらい酔っていた私でも覚えていた。
そう、本当によく分からない。
辛いことがあったんだと思う、癒されたいんだと思うとか、勝手に色々このイケオジに対して思いをめぐらせていた。
ここまで来てようやく思い出した。
なんかメソメソしていたイケオジを見ていた私は、無性にラーメンが食べたくなった。
時期は6月だったから冷麺でも良かった。
私は麺類が大好きだった。
特にお酒を飲んでいる途中で食べる麺類が好きだった。
締めに食べる人が多いけど、私は途中が良い。
そう決めて、店員に何か麺類を追加注文した。
注文したはずだった。
私もかなり酔いが回っていたから、分からない。
でも、ちゃんとラーメンを注文したんだ。
注文した麺類が卓上に届き、食べ始めたつもりだった。
しかし、私が食べていたのは、隣に座っていたイケオジの長い黒髪だった。