元カレに裏切られてすぐにエリート上司と出会うなんてあり得ないと思ったら計画通りでした

　優斗母は愛想笑いをしながらこれからのことを淡々と語る。

　まず優斗と結婚したら同居すること。
　実家には要介護の祖母がいるので休日は介護を手伝うこと。
　平日は仕事をして家事は夜にすること。
　父は食の好みがうるさいので、これから山内家の料理の味を覚えてもらうこと。

「料理が苦手でも大丈夫よ。あたしがしっかり教えてあげるわ。むしろ、中途半端に料理ができる人よりいいわ。最初からうちの味を覚えてもらえるもの。そのあたりは安心だわ」

　優斗母は嬉々として語る。
　乃愛はきょとんとした顔で聞いている。
　優斗は満足げに笑っている。

　しばらく母の話が続き、ようやくひと息ついた頃、乃愛が控えめに手を上げた。

「あのー、それって、嫁にメリットひとつもないですよね？」

　優斗も母も「は？」という顔で固まった。
　乃愛は口もとに人差し指を当てて宙を見上げる。

「だってぇ、仕事してるのに同居して全員分の家事やって、その上介護までやるなんてさー……」

　乃愛は優斗と母に目を向けてさらっと告げる。

「それって嫁じゃなくて奴隷じゃない？」