元カレに裏切られてすぐにエリート上司と出会うなんてあり得ないと思ったら計画通りでした
「それでは総仕上げといこうか」

 千秋さんはテーブルの上で両手を組んで私をまっすぐ見つめて言った。
 私は彼と向かい合って座り、コーヒーを飲みながらこくんと頷いた。

 週末の午後、私たちは今後のことを話し、行動に移すことにした。

「いろいろ助けてくれて、ありがとうございました」
「礼を言うのはすべて解決してからでいいよ」
「あなたに出会えていなかったら、きっと私は今までと変わらない生活だったと思います。だから、そのことのお礼をまずは言います。そしてあの親子と完全に縁切りできたら、またお礼を言います」
「そっか。じゃあ、そのときは寿司でお祝いしよう」
「私のおごりで」
「それは無理だな。君の給料では少々難しい金額のお店に行く予定だから」
「……あなたに借金します」

 千秋さんはくつくつ笑って冗談を言い、私は結構真面目に返す。
 それから先は好きな寿司ネタの話で盛り上がっていたところで、自宅のインターホンが鳴った。

 千秋さんは知人の弁護士を呼びつけていた。
 千秋さんは玄関先で挨拶を交わし、弁護士の知人をリビングに招いて私に紹介してくれた。

「前から話していた弁護士の川喜多(かわきた)さんだよ」

< 139 / 282 >

この作品をシェア

pagetop