元カレに裏切られてすぐにエリート上司と出会うなんてあり得ないと思ったら計画通りでした
「君と知人のバーでとなり合わせたとき、奇跡かと思ったんだ。言い方は悪いけどチャンスだと思った」
「……正直ですね」
「気になっていた女性が困っている。助けたいと思うのが男心というものだ」
「そうですか。ありがとうございます」

 そのことについては本当にありがたいと思っている。
 ただ、ここ最近いろんなことが起こり過ぎて私の頭が追いついていない。
 ゆっくり千秋さんのことを考える余裕がない。

「その……付き合うっていう話なんですけど……」

 その場のノリで言っていたように聞こえるけど、そこまで想ってくれていたなら私もちゃんと考えなきゃいけない。

「まだ……心の整理ができていなくて」
「大丈夫。まずはすべてクリアにしよう。それから考えてくれればいいよ。ゆっくり待つから」

 そんなふうに言われても、かえって申し訳ない気持ちばかりが膨らむ。
 そこまで想われるほど魅力のある女だと自分では思えないからだ。

「その、もし他に気になる女性ができたら、そちらへ行っても……」

 おずおずと小声でそう告げると、彼は思わぬ返答をした。

「実は俺、この5年間誰とも付き合っていないんだ」
「ええっ!? 嘘でしょ! そんなまさか」
「自分でも諦めの悪い奴だと思っている。結果的に諦めなくてよかった。君ともう一度チャンスがあるなら」

 千秋さんはちょっと酔っていて、やけに嬉しそうに語った。

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