元カレに裏切られてすぐにエリート上司と出会うなんてあり得ないと思ったら計画通りでした
 これは紗那と再会する少し前のことだ。
 この日千秋は酔っていて、バーの店長に愚痴をこぼしていた。
 すると店長は呆れ顔で千秋に訊ねた。

「お前いつまで彼女を追いかけるつもり?」
「うるさいな。見守っているだけだ」
「彼女を尾行してるだろ」
「たまたま、偶然、町で見かけただけだ」
「なんでたまたま見かけた場所が産婦人科なんだよ。おかしいだろ」

 千秋はグラスの酒を飲み干してテーブルにダンッと置いた。

 この日、千秋は見てしまったのだ。
 紗那が産婦人科から出てくるところを( ※ )
 それで彼は壮大に勘違いした。
 紗那は婚約者の子を妊娠しているのだと。
 そのことに大きなショックを受けて立ち直れなくなり、ひとりで飲み屋を梯子して酔い潰れたのだった。

「もう諦めるしかないのか」
「そうだな。諦めろ。お前ならすぐ他に相手が見つかるよ」
「紗那ちゃんでないとだめなんだ!」
「紗那ちゃんて……」
「海外にいるあいだ彼女のことを忘れられると思った。しかし、戻ってきて偶然彼女を見かけたら、恋心が再燃した!」
「いちいち中学生みたいな発言するなよ。イメージ総崩れするぞ」

 ※紗那が産婦人科に言った理由はピルを処方してもらったから(P21参照)

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