元カレに裏切られてすぐにエリート上司と出会うなんてあり得ないと思ったら計画通りでした
 納品したモノに問題があったり、クレームがあると調査をして報告書をまとめる。原因を探るための膨大な量のデータ収集と細かい分析が必要で、ときには深夜に及ぶこともある。
 同じ年齢の女性の平均年収よりも高めだが、その分心身ともに疲弊する。

 それでも仕事が終われば買い物をして帰り、夕食を作って明日のお弁当の準備をして、それからお風呂のあとに洗濯をまわして、浴室乾燥機能で衣類を乾かす。
 翌朝はお弁当作りと朝食を用意して優斗を起こす。
 それから急いでメイクをして出社する。

 これをもう3年も続けている。

「だから、同居すれば母さんが家事も料理もしてくれるんだって」

 優斗は相変わらず夕食のときにそんな話を持ち出した。
 同居は嫌だとはっきり言ったのに、まったく伝わっていない。

「新婚のうちはふたりで暮らしたいのよ」
「は? ちょっと意味わかんないんだけど。もうずっとふたりで暮らしてきたじゃん」

 私はおかずの鯖の塩焼きの骨を丁寧に取りながらぼそりと答える。

「同棲と結婚は違うでしょ?」
「俺からすれば変わんないよ」

 優斗は味噌汁を飲み干すと箸を置いた。

「優斗は何もしないからね」
「何だよ、その言い方。棘があるなあ」
「本当のことでしょ? 共働きで家賃折半なのに、どうして家事ぜんぶ私なの?」
「またそれ? いい加減聞き飽きたよ。だから同居しようって言っているんじゃないか」

 優斗はあからさまに深いため息をついた。

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