元カレに裏切られてすぐにエリート上司と出会うなんてあり得ないと思ったら計画通りでした
 私は動揺しながらも、どうにか優斗と目を合わせて訊ねた。

「責任?」
「ああ、そうだ。紗那が俺と別れるなんて言うからこうなったんだ」
「それなら別れる原因を作ったのはあなたよ」
「俺が浮気した原因は紗那なのに。紗那は同棲してからうるさくなった。昔みたいに素直で可愛い紗那がいなくなった。俺はそれが耐えられなかったんだ」

 優斗は涙ぐみながらすがりつくように私に訴える。

「なあ、俺が全部悪いのか? こういうのはお互いに非があるもんだろ。俺だってこんな家に住みたくないんだ。同居なんて俺も嫌だったんだ」

 今さら何を言い出すのだろう。散々私に暴言を吐いておきながら今度は同情を引くやり方ですか。
 そんなもの通用しない。

「お願だ、紗那。別れないでくれよ」

 優斗が私に抱きついてくる勢いで迫り、とっさに川喜多さんが口を挟んできた。

「優斗くん、紗那さんに接近……」
「山内くん!」

 私は川喜多さんの発言を遮るように、わざと優斗を名字呼びした。
 優斗は驚いて目を見開き、硬直する。
 私は冷静に、静かに告げた。

「私はあなたに対して、もう同情も愛情もないのよ。昔の私とかどうでもいいの。美化した思い出にすがらないで。現実を見て」
「ううっ……紗那」
「気安く名前で呼ばないでください」
「待って……待ってくれよ……」

 私に伸ばしてきた彼の手を、私はただ冷たく眺めて、最後に言った。

「さようなら」

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