元カレに裏切られてすぐにエリート上司と出会うなんてあり得ないと思ったら計画通りでした
 千秋さんに対して疑心暗鬼になっている自分に嫌気が差した。また相手が彼だったら、私はショックのあまり壊れてしまうかもしれない。
 そんなことを自覚しているくせに、私は乃愛の相手を確かめたかった。

 いや、正確には千秋さんでないことを確認して安心したかった。
 私は乃愛のあとを追いかけた。

 乃愛は高いヒールをカツカツと鳴らしながらご機嫌な様子で歩いていく。そして彼女はホテルの前を通り過ぎて、古い店のとなりにある路地を横切った。
 見失わないように急いで駆けつけると、乃愛の声が高らかに響いた。

「やぁだ。こんなところに呼び出して何ですかあ?」

 やっぱり誰かと待ち合わせしていたんだ。
 私は気づかれないように壁の陰に隠れた。相手の顔は見えない。

「あたし、喉乾いたんで、早くお酒飲みたいんですけどぉ」

 となりの店は古いバーのようだった。乃愛は早く店に入りたいみたいだけど、相手がそれを許してくれないようだ。

「で、今日はいくらくれるんですかあ?」

 お金のやりとりをしている?
 一体、誰と……。

 私が壁から顔を覗かせてみると相手の顔は見えなかったけど、声だけ聞こえてきた。

「うるさいわね。あなた、がめついのよ」

 どくんっと胸の鼓動が鳴った。同時に頭が真っ白になった。

 これは、美玲の声――!

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