元カレに裏切られてすぐにエリート上司と出会うなんてあり得ないと思ったら計画通りでした
 どうやって病院に来たのかよくわからない。不明瞭な視界の中でうっすらと店の中から複数人が出てくるのを見た。その中に美玲の姿もあった。
 美玲は私に声をかけてくれた。まるで本当に心配しているような声だった。

 私は誰かの車に乗せられて病院へ連れていかれ、そこで点滴を受けているうちに意識がはっきりしてきた。
 私のそばにいたのは美玲だった。

「紗那、気がついたのね。よかったわ。心配したのよ」

 美玲は本当に心配そうに私を覗き込んでいる。その顔を見て吐き気がした。
 よくも平然とそんなことが言える。胸の奥から嫌悪感が込み上げてきて、私は美玲から目をそらした。

「立ちくらみだそうよ。あなた、ちゃんと食べてないんでしょ。不眠もひどいみたいだし、一度心療内科で診てもらったほうがいいわ」

 美玲の嘘っぽい言葉が頭に響く。
 私は吐き気を堪えながら、彼女に再び目を向けて言った。

「美玲と乃愛の話、聞いたよ」
「えっ……」

 美玲は笑顔のまま固まった。

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