元カレに裏切られてすぐにエリート上司と出会うなんてあり得ないと思ったら計画通りでした
「お願いだから出ていって。これ以上一緒にいたらまた苦しくなる」

 すでに呼吸が浅くなって、再び眩暈がしてきた。
 美玲がどんな顔をしているのか、見ていないからわからない。見たくもない。
 彼女は意外にもすんなり私の言うことを聞いてくれた。

「じゃあ、帰るわ。紗那に苦しんでほしくないもの」

 どの口がそんなことを言うのだろうと思ったけど、反論する気にもなれなかった。
 美玲がコツコツと歩いて扉の前で止まると、再び私に話しかけた。

「そういえば、あの男」

 美玲の言葉にどきりとした。今この場で出てくる男の人といえば、千秋さんことだ。
 私は美玲の顔を見ないようにして、静かに耳を傾ける。
 彼女は次にとんでもないことを言った。

「乃愛を使ったら簡単に陥落したわよ」

 胸を鈍器で潰されたみたいな感覚がして、一気に吐き気が込み上げた。
 私は手で口を覆って恐る恐る顔を上げる。視線の先には微笑を浮かべる美玲の顔がある。
 彼女は薄ら笑いを浮かべながら言った。

「あの人もしょせん、オスなのね」

 私はもう、美玲の言葉が耳に入ってこなかった。

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