元カレに裏切られてすぐにエリート上司と出会うなんてあり得ないと思ったら計画通りでした
 美玲が出ていったあと、私は込み上げる吐き気を堪えられず、袋の中に胃液を吐いた。ろくに食事をとっていないから吐くものもない。
 ひどく咳き込みながら、同時に涙も大量に出てきた。

 私には心を許せる人は誰ひとりいないんだ。
 父も母も兄も、ずっと仲良しだと思っていた友だちも、好きになった人も、今は信じられない。
 私は居場所をすべて失ってしまった。

 どうしてこんなことになったんだろう?
 どうして私の人生ってこんなことばかり起こるんだろう?

「もう、無理……」

 私はしばらく泣き腫らしてしまった。


 翌日の午後、私はマンションに帰りついた。だけど、正直、ここにもいたくない。すぐに別の住む場所を探さなきゃいけなかった。仕事に就いているうちでないと賃貸契約できないから。
 そんな冷静な思考はわずかに残っていた。

 バルコニーに出て、目の前に広がる景色を眺めた。
 10階だから本当に眺めがいい。仕事から疲れて帰ってここから夜景を見るのが好きだった。休日に洗濯を干して、夕方にはオレンジに染まる空を眺めるのも好きだった。

 今は誰も信じられない。誰も味方はいない。未来は真っ暗で見えなくて、苦しさに悶えて、この状況から楽になりたいと思った。

 私は、階下を見下ろした。

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