元カレに裏切られてすぐにエリート上司と出会うなんてあり得ないと思ったら計画通りでした
 千秋は紗那のためなら何でもできる。例えば会社を解雇されるようなことになっても、紗那を救うためなら自らを犠牲にする覚悟があった。
 ところが美玲はどうだろうか。

(お前にそんな覚悟があるとは思えないな)

 千秋は、平気なそぶりを見せながら動揺を隠せない美玲を冷たく見つめて、胸中で呟いた。

 美玲のプレゼンは完璧だった。スクリーンに映し出された彼女の資料はわかりやすくまとめてあり、説明も簡潔で難しい言葉は一切ない。
 誰もが美玲を優秀な人物として感心しながら彼女の言葉に耳を傾けた。

 だが、千秋だけはそうではなかった。

(本来、この場には紗那がいるはずだった。それをお前が奪った)

 腕組みをしてじっと美玲を見つめる千秋。その視線とばっちり目があった美玲はとっさによそを向いた。
 千秋は胸中で舌打ちした。

(林田美玲。お前を紗那と同じ目に、いやそれ以上の苦しみを与えてやる)

 はきはきと明るく誰にでも好感の持てる話し方をする美玲を眺めながら千秋はひとりほくそ笑んだ。

(さあ、報復の時間だ)

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