元カレに裏切られてすぐにエリート上司と出会うなんてあり得ないと思ったら計画通りでした
 美玲は音声操作をしていた社員に詰め寄って怒鳴りつける。

「何やってんのよ! おかしいと思ったらすぐ止めるでしょ! これだから仕事デキない男は……」

 うっかり本性を露わにした美玲にこの場にいる全員が注目した。
 本部長は怒りの形相で美玲を責め立てる。

「林田くん! なんだこれは! 職場の風紀を乱していたのは君だったのか!」
「ち、違っ、あたしは……」
「何が違うんだ。さっきの声は君だろう?」
「違うあたしじゃ……」
「一連の騒ぎは石巻さんが原因ではなく、君だということじゃないか」
「あたしじゃないんです……!」

 いくら美玲が訴えても、誰も信用しなかった。この場にいる全員が音声の声を美玲であると認識している。

 狼狽えながら目線を泳がす美玲の目にふと留まったのは、腕組みしたまま真顔で座る千秋の姿だ。
 美玲は怒りに震え、拳を握りしめながら叫んだ。

「やまなしちあきぃいいいいっ!!!」

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