元カレに裏切られてすぐにエリート上司と出会うなんてあり得ないと思ったら計画通りでした
 これまで紗那に関するあらゆる事柄を完璧に計画してきた千秋にとって、このことは大きな誤算だった。
 しかし、少し考えればわかることだ。美玲と乃愛が繋がっているなら、この機会も利用するだろうことに。

 千秋は座ったままテーブルに突っ伏して額をごつんとぶつけた。

「失態だ」

 よく考えてみたら、紗那がひどく落ち込んでいたのはそのことが原因ではないか。
 千秋は何度も紗那に好意を示し、交際を申し込んできた。そのたびに彼女から(かわ)されていたが、それでも誠実に思いを伝え続けてきたつもりだった。

 しかし、紗那からすればどうだろうか。
 何度も付き合おうと言ってきた男がよその女と体の関係になっていることを知ったら当然失望するだろう。
 触れられたくもないはずだ。

 千秋は紗那に振り払われてしまった手をじっと見つめて俯いた。
 紗那の行動に少なからずショックを受けていたが、紗那はもっと大きなショックを受けていたに違いない。

「林田に偉そうなこと言えないな」

 千秋はすぐ紗那に電話したが繋がらなかった。メッセージを送っても既読すらつかず。
 紗那は今、休みを取って親戚の家に行っているという話だけ聞いていた。てっきり休暇を取っていると思っていたが、もしかしたら二度と戻るつもりがないのかもしれない。

「直接会うしかない」

 千秋はスケジュール調整をして休みを取り、紗那を迎えに行くことにした。

 真実を伝えるために――。

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