元カレに裏切られてすぐにエリート上司と出会うなんてあり得ないと思ったら計画通りでした
 会合という飲み会は祖父の知人や近所の人たちが集まり、盛大に開かれた。大きなお屋敷のおうちに30人くらいが集まって食べて飲んで騒ぐ。
 ただ驚いたのは、料理やお酒を出すために動いているのは女性ではなかった。

 おじさんたちがビール瓶やグラスを運び、若い男性たちが料理を運ぶ。もちろん女性も給仕しているけど、ここには田舎独特の男女間の差がなかった。
 私が手伝おうとしても、おばさんに止められてしまう。

「紗那ちゃんはお客さまだから座ってて」
「そうだ、紗那ちゃん。刺身は好きか? おじさんが捌いてやろう」
「あらやだ。若い子にデレデレしちゃって」

 私が驚いて正座していると、若い男性がやって来て私のグラスにビールを注いでくれた。
 すぐにとなりにおばさんが座り「たくさん食べてね」と言ってくれた。
 私はひとつの疑問をぼそりと口にした。

「男の人がよく動くんですね」

 そう言うとおばさんは声を上げて笑った。

「当たり前よお。男は体力があるんだからね。どんどん動いてもらわないと」

 彼女がそう言うと男性たちは腕を見せつけて自慢の筋肉を披露していた。
 山内家とずいぶん違う。
 ここには男が女に命令し、女が従う構図は存在していなかった。

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