元カレに裏切られてすぐにエリート上司と出会うなんてあり得ないと思ったら計画通りでした
「えーもうちょっとこうしていたい」

 千秋さんは私を抱きしめたまま動かず、子どもみたいに甘えた声を出した。

 この人ってこんな人だっけ?
 ギャップすごいんですけど……。

 私はなんだかむず痒くなってしまって、ゆっくり右手を伸ばすと彼の髪をくしゃくしゃと撫でた。すると彼は私をじっと見下ろして、顔を近づけてきた。
 たぶんこれはキスをするんだなって思ったけど、それに流される前に私はどうしても引っかかっていることをクリアにしたかった。

「乃愛と千秋さんは知り合いだったんですか?」

 はっきりと訊いてしまった。
 すると彼はゆっくり私から離れて困惑の表情になった。頭をかきながら目線をそらし、言いにくそうに話す。

「知り合いというか、理由があって」
「はい」

 私はドキドキしながら続きを聞いた。どんな理由があっても受けとめよう。たとえ千秋さんが乃愛と関係を持っていたとしても、もう過去のことだから。
 
 少しの沈黙のあと、千秋さんは私の肩に手を乗せて神妙な面持ちで言った。

「今から話すことはぜんぶ真実だから。聞いてもらえる?」

 私は緊張しながら彼の目を見て静かにうなずいた。

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