元カレに裏切られてすぐにエリート上司と出会うなんてあり得ないと思ったら計画通りでした
「私、本当に不思議なんです。そこまで想ってもらえるほどの人間じゃないのに、こんな私にどうしてそこまでって思うんです」

 嬉しくて幸せなのに、私はどうしても気になっていることを口にした。すると千秋さんは一瞬目を丸くして、それから微笑んで答えてくれた。

「なるほど。じゃあ、君は自分のことがまったく理解できていないということだ。だって俺は君のことを一番理解しているからね」
「え……?」
「最初に出会ったときは、他人に気遣いができるのにそっけない人という印象だった。次に会ったときは笑顔のいい子だという印象だった」
「そうなんですか」

 私って本当に千秋さんが眼中になかったのだと思うとなんだか申し訳なくなってきた。

「仕事をしている君の姿を何度か見かけた。責任感のある子だなと思ったよ」
「見られていたの?」

 私がじっと見つめると彼は肩をすくめて言った。

「好きな子を遠くから見ていたいと思う淡い恋心だよ」
「思春期の男子みたい」
「そう、まさにそれ」

 千秋さんはくしゃりと破顔して言った。
 そんな彼を見て、私はふと優斗のことを思い出した。彼だったら私がこんな発言をしたら烈火のごとく怒り狂っていただろう。
 千秋さんとは会話の波長が合うのか、それとも彼が懐の深い人だからなのか、話していて本当に気が楽で心地いい。

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