元カレに裏切られてすぐにエリート上司と出会うなんてあり得ないと思ったら計画通りでした
 美玲が写真に写る男の手をスマホ画面ぎりぎりまで拡大する。
 私はそこにあるわずかな違和感をじっくり見つめた。

 男の指先、それも左手の人差し指の先だ。
 爪の端が少し欠けてそのまま肉に切り傷がある。

「あー、これ。包丁で切ったんだろうね。料理とかするのかな?」

 美玲がそう言って、ますますはっきりした。
 だってこれは優斗の傷だから。
 彼は怪我をしたと大袈裟に騒いで散々私に愚痴を言って、二度と料理しないとぶつぶつ言って。

 私が手当てをした傷だから!!

「これ、優斗かもしれない」
「やっぱりか……でも、これだけじゃグレーかな。顔が見えないんじゃ」
「うん」

 顔は見えない。
 だけど、この手は優斗に間違いない。
 傷がなくても5年一緒に過ごして間近で見てきた男の手を間違えるわけがない。

「大丈夫? 紗那。今日どっか泊まる? あたしも付き合うよ」
「いや……大丈夫。まだ、そうと決まったわけじゃないし」
「こう言っちゃなんだけど、別れるなら早いほうがいいよ。結婚しちゃったら取り返しがつかなくなるから」
「……わかってる」

 わかっているけど、今は正直、頭の中が混乱してどうすればいいのかわからない。

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