元カレに裏切られてすぐにエリート上司と出会うなんてあり得ないと思ったら計画通りでした
 美玲がどんな反応をしても何を口走っても私は以前のように感情的にはならなかった。ただ、目の前の彼女をまるで第三者のような目線で見つめている。それほど美玲の存在は私にとって遠いものとなっていた。

「あたしは紗那のことが好きなのに……こんなに想ってるのに……」

 美玲はひと目もはばからず泣き出した。わざわざハンカチを取り出して鼻に当ててぐすぐす音を立てながら泣く。
 私の同情を引きたいのだろうということはわかったけど、私にそんな感情は生まれなかった。
 私は淡々と自分の気持ちを伝えることにした。

「美玲のその気持ちは嬉しいよ。だけど異性同性にかかわらず、想いって一方通行じゃ意味ないよ。相手を思い通りにしたいと思ってる時点でそれは優斗とやっていることは変わらないよ」

 美玲の表情が強張り、彼女は私を睨むように見つめて言った。

「恩を仇で返すの?」
「違うよ。美玲の人生のためだよ」
「何があたしのためなのよ。紗那はあたしの気持ちを踏みにじってるだけじゃないの」

 美玲はテーブルに拳を叩きつけて身を乗り出すようにして言った。
 となりの席の客がちらっとこちらを見たのがわかった。

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