元カレに裏切られてすぐにエリート上司と出会うなんてあり得ないと思ったら計画通りでした
 私は頭が混乱しながらも、どうにか平静を保ち、彼にひとつずつ訊ねることにした。

「ええっと、まずどういうことか説明してくれますか?」
「アメリカ支社に戻ってこいと言われてるんだけど、紗那と離れたくないから断ってる。でももし、紗那が一緒に行ってくれるなら受ける」

 彼はとんでもないことを言っていると自覚しているのだろうか。

「ま、待って。ちょっと待って。それ、だめでしょ。私の返答次第で千秋さんの人生が変わってしまうよ」
「いいよ、それで。俺の人生はぜんぶ紗那のものだ」

 もう誰かどうにかしてよ、この人!!

「千秋さん、落ち着いて!」
「俺は落ち着いてるよ。紗那が落ち着けよ」
「落ち着けませんよ!」

 千秋さんは正直私とは住む次元が違うレベルの人だと思っている。そんな人と想いが通じ合っているだけで奇跡なのに、彼が自分の人生のすべてを私に委ねているなんて。

「私が行かないって言ったら」
「俺も行かない」
「私が田舎に引っ越すと言ったら」
「俺も引っ越す」
「仕事は?」
「転職する」
「じゃあ、私がもし別れるって言ったら」
「別れない!」

 あ、そこだけは絶対に譲れないんだ。

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