元カレに裏切られてすぐにエリート上司と出会うなんてあり得ないと思ったら計画通りでした
「そ、そうですか。では、今後とも紗那をよろしくお願……」
父が言いかけたときだった。
母がすかさず意見を述べたのだ。
「あなたみたいな会社と取引してるくらいだから大したことないのねえ」
「こ、こらっ。そんな失礼なことを言うんじゃない」
「だってそうでしょ。あなたのお給料が安すぎてうちは食べていくのが大変なんだから」
「そういう話を人前でするなよ」
父は額に汗を滲ませながら狼狽える。その横で母は千秋さんをじろじろ見ている。私はもういたたまれなくなって今すぐこの場から出ていきたくなった。
やっぱり実家に来るんじゃなかった。
母に会わせるんじゃなかった。
千秋さんにこんな実家の醜態さらしたあげく彼を咎めるような発言までされてもう耐えられない。
もういい。
私が立ち上がろうとしたところだった。
千秋さんは父に向かって笑顔で切り出したのだ。
「たしかに素性がわからないのは不安ですね。なので正直に話します。わが社の八木恭一が俺の父です」
聞いたことがあるような、でも知り合いではないその名前を頭の中で反芻していると、父が驚愕の声を上げた。
「ええ!? 八木恭一常務取締役ですか!!」
父が言いかけたときだった。
母がすかさず意見を述べたのだ。
「あなたみたいな会社と取引してるくらいだから大したことないのねえ」
「こ、こらっ。そんな失礼なことを言うんじゃない」
「だってそうでしょ。あなたのお給料が安すぎてうちは食べていくのが大変なんだから」
「そういう話を人前でするなよ」
父は額に汗を滲ませながら狼狽える。その横で母は千秋さんをじろじろ見ている。私はもういたたまれなくなって今すぐこの場から出ていきたくなった。
やっぱり実家に来るんじゃなかった。
母に会わせるんじゃなかった。
千秋さんにこんな実家の醜態さらしたあげく彼を咎めるような発言までされてもう耐えられない。
もういい。
私が立ち上がろうとしたところだった。
千秋さんは父に向かって笑顔で切り出したのだ。
「たしかに素性がわからないのは不安ですね。なので正直に話します。わが社の八木恭一が俺の父です」
聞いたことがあるような、でも知り合いではないその名前を頭の中で反芻していると、父が驚愕の声を上げた。
「ええ!? 八木恭一常務取締役ですか!!」