元カレに裏切られてすぐにエリート上司と出会うなんてあり得ないと思ったら計画通りでした
 母は目を丸くして、あたかも自分が正しいという主張を繰り返す。

「関係あるわよ。娘婿になるんだから。素性をしっかり知っておく必要があるでしょ」
「言い方が失礼だよ」
「だって本当のことでしょ。うちは両親揃ってるのに向こうはシングルなんて」
「そんなの関係ないよ! 千秋さんは誠実で真面目な人だもん!」

 私は焦って冷静さを失ってしまい、感情的に母に声を荒らげた。
 すると千秋さんがとなりで冷静に口を挟んだ。

「気になるようでしたら冠婚葬祭の行事には父に出席してもらいますよ」
「まあ、それができるなら構わないけど、名字が違うんじゃ周囲にわかっちゃうわよね」

 母はしばらく考えたのち、思いついたように言った。

「そうだわ。あなたうちの家に婿入りすればいいのよ。うちの名字になれば誰も何も思わないでしょ。我ながら妙案だわ」

 母の性格はわかっていたのに、私はまた期待してしまっていた。
 やっぱり彼女は自分のことしか考えられない人なんだ。
 どうして、ほんの少しでも、私を見てくれないんだろう。
 もう悲しくて苦しくて、つらくて、泣きそうになったときだった。

「いい加減にしないか!!」

 大声で怒鳴りつけたのは、意外にもいつもおとなしい父だった。

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