元カレに裏切られてすぐにエリート上司と出会うなんてあり得ないと思ったら計画通りでした
 空港に到着して、搭乗開始時刻になるまで、空港デッキで滑走路を眺めた。たくさんの飛行機がそれぞれの目的地へ向かって飛んでいく中、私はこれまでのいろいろな出来事を思い返していた。

 会社を辞めるとき、社内の人たちから花束をもらった。形だけなのかもしれないけれど、お疲れさまと声をかけてもらって嬉しかったし、今まで自分が成し遂げてきた仕事を自分で褒めてあげたかった。

 兄は転職先を見つけて、実家と少し離れたアパートに引っ越した。以前勤めていた会社よりずいぶん給料は下がるみたいだったけど、それでも兄は前より顔つきが明るくなっていた。
 私が出発前に兄に挨拶をしに行ったとき、父と母のことを訊ねた。

 母は父からずっと離婚を考えていたことを告げられ、急に焦っておとなしくなったみたいだ。父はあんな性格だから母を捨てることなどできないだろうけど、それでも今までずっと我慢してきたのだから、少しくらい自分の主張をしてもいいと私は思う。

 彼らがこれからどうなるのか、やはり私は気になってしまうけど、それでも私は私の道を進んでいこうと思う。
 帰国したら帰省はするし、おじいちゃんの家にも遊びに行く。

 結局、私は実家を捨てることなんてできなかった。
 それでもいいよ、と千秋さんは言ってくれた。

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