元カレに裏切られてすぐにエリート上司と出会うなんてあり得ないと思ったら計画通りでした
 ただ、私の中には気持ちの変化があった。
 結婚や家族が増えることに不安しかなかったあの頃とは違って、今はとても心が穏やかで、明るく前向きな未来が見える。

 千秋さんと出会えたからだ。

 私がとなりに立つ彼を見上げると、彼は穏やかな表情で訊いた。

「もしかして寂しくなった?」
「あなたがいるからちっとも寂しくないよ。それに、千秋さんのまわりの人たちもいい人ばかりだし」
「そうか。よかった」

 彼はそう言って微笑んで、私の手をそっと握った。
 だから、私も握り返して少し彼にもたれかかるようにくっついた。

「フライト時間長いけど、映画を3本くらい観れば着くから。近いだろ?」
「遠いですよ。私は寝てるんで」
「そっか。じゃあ、いたずらしてもいいのかな?」
「絶対やめて。ていうか、やりそう」

 私が半眼で睨みつけたら、千秋さんはにこにこしながら私の手を引いた。

「じゃあ、行こうか」
「はい」

 私たちは手を繋いだまま飛び立つ飛行機を背後にして、チェックインカウンターに向かって歩き出した。

 ここから、私の新しい人生が始まる。


< 完 >
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