元カレに裏切られてすぐにエリート上司と出会うなんてあり得ないと思ったら計画通りでした
「ありきたりな口説き方ですね」
「まあ聞いて。俺の親戚が所有しているマンションだから、空きがあるか聞いてあげることもできる。家賃も交渉次第で安くできるよ」
家賃を安く……。
少しその気になったけど、すぐに我に返る。
「すごい疑問があるんですけど」
「うん、何?」
「あなた、私と初対面ですよね? どうしてそこまでしてくれるですか? わかった。傷心の女につけこんで遊ぶつもりですね?」
「酔ってるわりに冷静だな」
男は少し困惑の表情を見せたあと、落ち着いた口調で言った。
「こうして話すのは初めてだけど、実は君のことは知ってる。同じ会社だろう」
「うそ。私、知らない。だいたい、あなたみたいな人がいたら絶対目立つでしょ」
「このあいだ、君が落としたハンカチを拾ったよ」
「え? あ、あー……あの人?」
いや、でもそれだけで顔を覚えているもの?
この人、あのとき私の顔なんて見ていないはず……。
疑いの目を向けると、男はわざわざ名刺を見せてくれた。
たしかに同じ会社名だけど、なんか違う。
彼はグループ本体の人間だった。
「エリート組じゃないですか! うわ、なんかすみません。私さっきから失礼なことを……」
「これで身元は証明できたよね? それ、あげるよ」
私は受け取った名刺を数秒凝視した。
【月見里千秋】
Chiaki Yamanashi
「まあ聞いて。俺の親戚が所有しているマンションだから、空きがあるか聞いてあげることもできる。家賃も交渉次第で安くできるよ」
家賃を安く……。
少しその気になったけど、すぐに我に返る。
「すごい疑問があるんですけど」
「うん、何?」
「あなた、私と初対面ですよね? どうしてそこまでしてくれるですか? わかった。傷心の女につけこんで遊ぶつもりですね?」
「酔ってるわりに冷静だな」
男は少し困惑の表情を見せたあと、落ち着いた口調で言った。
「こうして話すのは初めてだけど、実は君のことは知ってる。同じ会社だろう」
「うそ。私、知らない。だいたい、あなたみたいな人がいたら絶対目立つでしょ」
「このあいだ、君が落としたハンカチを拾ったよ」
「え? あ、あー……あの人?」
いや、でもそれだけで顔を覚えているもの?
この人、あのとき私の顔なんて見ていないはず……。
疑いの目を向けると、男はわざわざ名刺を見せてくれた。
たしかに同じ会社名だけど、なんか違う。
彼はグループ本体の人間だった。
「エリート組じゃないですか! うわ、なんかすみません。私さっきから失礼なことを……」
「これで身元は証明できたよね? それ、あげるよ」
私は受け取った名刺を数秒凝視した。
【月見里千秋】
Chiaki Yamanashi