元カレに裏切られてすぐにエリート上司と出会うなんてあり得ないと思ったら計画通りでした
 引っ越し先が決まったら、あとはあの家を出ていくだけだ。
 荷作りもそうだが、他にも書類上やっておかなければならないことが山ほどある。
 それよりも何よりも、まず優斗に別れることを告げなければならない。
 そして実家の親にも報告しなければならない。

 正直、気が重い。
 そううまくいかないだろうことは容易に想像できる。

「何かあればいつでも連絡して。あの店で愚痴聞きくらいはできるだろう」
「ありがとうございます。本当に」

 強がっているけど、正直不安だらけだった。
 もし彼に出会えていなければ、私は今でも現状を維持するために我慢し続けているだろう。

 逃げる場所があるというのはこんなに安心できるものなんだ。
 そんなことを考えている時点で、優斗のいるところは私にとって心休まる場所ではないのだ。
 
 結婚に妥協は必要というけれど、どちらかが我慢する関係は成り立たない。
 そのことに気づくことができただけでよかった。

 そして翌週――。

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