元カレに裏切られてすぐにエリート上司と出会うなんてあり得ないと思ったら計画通りでした
「ご心配なく。引っ越し先のめどはついているから」
「だったら今すぐ出ていけ! 俺のプライドを傷つけやがって許さないからな! 」

 本当に子どもみたい。
 自分に都合が悪くなったら逆切れする。
 
「家賃半分は私が払ってるの。それをきっちり清算して荷造りがきちんと終わったら出ていくから」

 冷静に話をしたつもりだった。
 しかし、優斗は手を振り上げると私の顔を叩きつけた。
 とっさのことで避けきれず、頬と耳に痛みが走った。

「殴った? 今、殴ったの?」
「お前が生意気だからだよ!」

 優斗は怒りの形相で拳を握りしめて震えている。
 私は彼を見て恐ろしいという感情ではなく、ただ失望感でいっぱいになった。

 そして意外にも冷静に思う。
 今までは私が我慢してきたから彼はここまで感情を爆発させることがなかったのだろう。
 これが彼の本性なのだ。

 このまま結婚していたら、私はずっと彼を怒らせないように我慢していたかもしれない。
 そうなると彼はますます図に乗って、見事にモラ夫の完成だ。

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