元カレに裏切られてすぐにエリート上司と出会うなんてあり得ないと思ったら計画通りでした
 もういい。
 これ以上話しても無意味だ。
 家賃や光熱費のことは気になるけど、もう一秒たりとも優斗と一緒にいたくない。

 私は黙って自分の荷物をスーツケースに詰め込み始めた。
 優斗は不貞腐れてソファに座り、大音量でテレビを見ている。
 私が出ていくとき、優斗はソファに座ったまま大声で言い放った。

「後悔しても遅いぞ!」

 誰が後悔などするものか。
 私はただ「さようなら」と言ってドアを閉めた。

 夜道の中をガラガラガラとスーツケースがうるさく音を立てる。
 冷静に考えてみたらいろいろやるべきことがまだ残っている。
 だけど、これ以上あの空間にいたら精神的にやばい。
 今は心を守ることが先決だ。

 急に足が止まった。
 と思ったら、いきなり目から涙がぼろぼろこぼれ落ちた。
 よくわからないけれど、涙が止まらないのだ。
 周囲の目を気にするでもなく、ぐしゃぐしゃと泣いてしまった。

 しばらくしたら頭がすっきりしてきたので、スマホを取り出して電話をかけた。
 相手が出ないので、こちらが諦めて切ろうとした瞬間に、応答があった。
 私は涙を拭って平静を保ちながら声を発した。

「すみません。お願いがあるんですけど」

 私は電話をしながら足早に最寄り駅へ向かった。

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