元カレに裏切られてすぐにエリート上司と出会うなんてあり得ないと思ったら計画通りでした
「まさか、こんなに早く出てくるとは思わなかった」

 突然の呼び出しなのに来てくれた月見里さんは、落ち着いているが少々驚いていた。

「ですよね。鍵の受け渡しは来週ですもんね。それまでにきちんと整理するために相手に別れを告げたのですが、少々ゴタゴタがありまして」
「あちらが別れを渋ったの?」
「うーん、そんな感じではないですね。出ていけって言われちゃって」
「家賃の半分は君が出してるんだろ?」
「ええ、でも、話が通じなくて……」

 まるで宇宙人と会話しているような感覚だった。

 月見里さんは手を伸ばして、私の髪をさらっと撫でるように触った。
 どきりとして肩が震えた。

「ああ、ごめん。頬が腫れてるから。殴られたのか?」
「まあ、ちょっと……軽くばちんって」

 避けたから軽くすんだけど、ズレたせいで頬より耳のほうが痛い。
 彼があまりにも私の頬と耳を撫でるから、私は少し身を引いた。

「ごめん、痛かった?」
「いえ、大丈夫です」

 あんまり認めたくないけど、意識してみるとこの人本当にかっこいいんだよなあ。
 足なっがいし、ドイツ人みたいにスタイルいいし(180~190センチ)

「ああ、そうだ。飴ちゃんあげよう」

 彼はポケットから棒付きキャンディーを取り出して私にくれた。
 なんですかそれ。泣いてる子どもをなだめるみたいな。

「あ、ありがとうございます」

 複雑だけどなんだか嬉しい。

< 57 / 282 >

この作品をシェア

pagetop