元カレに裏切られてすぐにエリート上司と出会うなんてあり得ないと思ったら計画通りでした
「あの、どうしてそんなに冷静に対処できるんですか?」
「ああ。似たような状況で別れた子を知ってるから」
「そうなんですか」
「愚かだね。逃したくないなら大事にすればいいのに」

 月見里さんのその言葉に、少々違和感を覚えた。

「あのー、私の彼氏は他に女がいるので私と別れてもどうってことないと思いますよ。きっと、私に腹が立って八つ当たりしているんですよ」

 苦笑しながらそう言うと、彼は冷静に返した。

「本当に別れたいなら未練がましく連絡してこないよ」

 未練がある? 優斗が? 私に?
 いやいや、便利な家政婦がいなくなったから困っているというところだろう。
 これからは乃愛ちゃんにお願いすればいい話だ。

「出ていけって言ったのあっちなのに」
「君は?」
「え……」
「彼に未練はある?」

 訊かれて少し戸惑った。
 未練ってどこまでがそうなんだろう。
 楽しいときもあったからそれを思い出すと胸が痛くなる。
 だけど私と同時に他の女を抱いた男なんて生理的に無理だし、あの母親も無理。

「未練はありません」

 そう答えると、月見里さんはにっこり笑った。

「そう、よかった。その気持ち、ぶれないようにね」

 このときの彼の言葉をすんなり受け入れたけど、正直私ひとりだったらどうなっていただろうと思う。

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