元カレに裏切られてすぐにエリート上司と出会うなんてあり得ないと思ったら計画通りでした
 月見里さんが腕組みをして真剣な表情で話す。

「なかなか面白いことを言う母親だな」
「どこに面白い要素が?」
「浮気は蚊にかまれたと」
「頭おかしすぎてツッコミが追いつかないレベルです」

 月見里さんは横目でちらりと私を見る。

「君は本当に苦労したんだね」
「ええ。もう、毎朝6時からこんな調子で電話してくるので困りました」
「めずらしいタイプだよね。そういうのは結婚まで本性隠すんだけど、彼も母親も正直すぎるというか」

 まあ、たしかに。
 本性が知れたおかげで結婚を逃れることができたのはありがたい。

「月見里さんのお知り合いの方もそんな相手だったんですか?」
「そうだね。もう結婚していたから別れるのに苦労したみたいだよ」
「そうですか」

 月見里さんに出会わなければ、私もなんだかんだ我慢して別れられなかったかもしれない。
 あのまま結婚していたら、本当に逃げ道がなくなっていた。
 もしかして、最初にバーで会ったときに私がそんな話をしたから助けてくれたのかな?

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