元カレに裏切られてすぐにエリート上司と出会うなんてあり得ないと思ったら計画通りでした
「やだぁ、いきなり撮らないでよ。髪が乱れちゃったじゃん」

 乃愛は写真を撮られたことより、写真の写り方を心配していて笑えてきた。
 対する優斗はしっかり怒りの表情をしている。

「何やってんだよ、紗那」

 私は冷めた目でふたりを見下ろしながら告げる。

「婚約破棄の理由になる証拠写真です。優斗の有責だよ」
「お前、性格悪いよ? 人としてサイテーだよ?」
「どうぞ吠えてください。では、さようなら」

 もう優斗の顔も見ずに勢いよくドアを閉めて外に出た。
 その瞬間、ドッと疲れが出て倒れそうになった。
 気が緩んだせいかもしれない。
 もしくは、もうこの家は私の居場所ではなくなったからかもしれない。

 毎日帰ってくる場所だったからなのか、妙に切なくなった。
 マンションを離れたところで電話がかかってきた。

 スマホ画面に表示されているのは『優斗の母』だ。
 なんというタイミング。というか、優斗が連絡したのだろうか。

 何を言われるのか、だいたい予想はできる。
 覚悟して通話を押すと、優斗の母の高らかな声が耳をつんざくように響いた。

『ちょっと紗那さん、結婚をやめるってどういうこと?』

< 76 / 282 >

この作品をシェア

pagetop