元カレに裏切られてすぐにエリート上司と出会うなんてあり得ないと思ったら計画通りでした
 どうしよう。このまま黙って出ていったほうがいいのかもしれない。
 だけど、私の胸の内はどろどろしたもので渦巻いている。

『お前、性格悪いよ? 人としてサイテーだよ?』
という優斗の言葉がよみがえる。

 母は額に手を当てて険しい表情で苛立ちを口にする。

「ああ、もう、どうしてこんなにうまくいかないの? これ以上あたしを困らせないでちょうだいよ。よそのうちの子は問題なくうまくいってるのに。どうしてうちだけ、ふたりともこんな……失敗したわ」

 頭の中に母の「失敗したわ」の声が何度も鳴り響く。
 軽いめまいがして、胸に渦巻くどろどろしたものが静かに爆発した。
 
「どうすれば成功だったの?」

 私が真顔で訊ねると、母は眉をひそめた。

「もういい加減にしてよ。私はあなたの都合のいい子どもじゃない」

 父が驚愕の表情になり、母の顔色をうかがった。
 でも、もう遅い。
 母はつかつかと私に近づいて、手を振り上げると思いきり私の頬を引っぱたいた。
 優斗のときは避けられたのに、母のときは固まって動けなかった。

「親に向かってなんてこと言うの!」

 ああ、もう怒りの感情もない。
 ただただ、失望感が襲ってくるだけ。

 悲しい。悔しい。寂しい。苦しい。
 大声で泣きたい。

 でも、そんなことは今までに散々やってきた。
 それでもすべて無意味だったから、もう親の前で涙なんか出ない。

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