新そよ風に乗って 〜慕情 vol.2〜

南の島で

夜遅くまで忙しなく旅行の準備をして、 やっとベッドに入れたのは、 既に日付が変わってしまっていた時刻だった。
これじゃ、 高橋さんに怒られちゃう。 そう思って無理矢理目を瞑るも、 興奮していてなかなか寝付けない。
出発時刻は、 夜便なので時間的には余裕があるのだけれど、 社内旅行の翌日なので先が読めない。 疲れてしまっていたら、 何も追加で用意はできないだろうし……。 そんな不安なことばかりを考えていると、 余計眠れない。 あれも持っていきたい。 これは、 置いて行っても大丈夫だろうか? ベッドに入ってからも、 また起きて思い出してはトランクの上に追加したい物を置いてみたり……。 そんな事をしながら、 寝たり起きたりして朝を迎えていた。

懸念されていた社内旅行も、 今年は穏やかに過ごせて終わり、 あっという間に出発当日になってしまった。
ゴールデンウィークで、 道路や空港が混んでいるといけないからと、 少し早めに高橋さんが迎えに来てくれて、 荷物を車のトランクに積んでくれている。
本当に、 これからハワイに行くのかな? 
何だか、 今更ながらまだ信じられない気分でいる。
でも……いつも仕事でニューヨークに行く時は、 高橋さんは冬のジャケットを着ているが、 今日は半袖のポロシャツ姿。 コートも着ていない。 そんな姿を見ると、 やっぱり行くんだと、 やっと実感がこみ上げてきていた。
道路はそんなに混んではいなかったが、 案の定、 空港の出発ロビーはゴールデンウィークを海外で過ごす人達の出国ラッシュで、 ごったがえしていた。
そんな人混みの中、 高橋さんは私を気遣いながらカートに荷物を載せて出発カウンターまで辿り着いた。
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