新そよ風に乗って 〜慕情 vol.2〜
高橋さんの右手が私の左頬に触れ、 されるがままに目を瞑ってしまう。
「お前を抱きたい」
そのひと言に反応し、 張りつめていた空気がピンッと音を立てたように驚いて目を開けると、 真上にいる高橋さんと目が合った。
「抱いていいか?」
そんな高橋さんの言葉に返事をする事が出来ずに、 ただ口を開けて高橋さんを見つめる事しか出来なかった。
「嫌ならしない」
高橋さんが左手で私の前髪をサイドに流しながら、 優しく言葉を発した。
私の前髪に触れている高橋さんの左手を、 離させるぐらいの否定の首を横に振り続けた。
「……」
「い、 いやじゃないです。 私……高橋さんに……もっと、 触れて欲しい」
言ってるそばから、 顔から火が出そうだ。
恥ずかしい!
何処かに隠れてしまいたい心境で、 思わず両手で顔を覆った。
「フッ……可愛いヤツ……」
すると、 高橋さんがそのまま私を抱きしめた。
仄かに香る、 高橋さんの匂い。
ああ……。
潮騒の音も海の香りも、 トロピカルなココナッツの南国の香りも、 やっぱり何処にいても、 この高橋さんの香りには敵わない。 私を安心させてくれる髙橋さんの香りも、 この腕も、 体温も、 高橋さんでないと意味を成さないんだ。
高橋さんが自分の胸から私を離すと、 そっと額にキスをした。
「お前……石鹸のいい匂いがする」
エッ……。
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