新そよ風に乗って 〜慕情 vol.2〜

異変

連休明けの翌週に決算報告会の打ち合わせがあり、 書類作りの資料集めとコピーとレジメ作成と……怒濤の忙しさで、 あっという間に1週間が経ち、 決算報告会に高橋さんと一緒にレジメ配り等もあったので、 出席した。
勿論、 私は後ろの席で書記兼アシスタント業務に徹していたが、 今年の決算報告会は例年になく議論がかわされ、 来期の予算への影響を考えての事なのかもしれないが、 各部署とも予算取りの目論見も兼ねての討論会と化していた。 中には、 エキサイトして怒鳴り声を出してしまう部署の部長もいたが、 
そんな時であっても、 予算折衝の枠組みを作る高橋さんはいつもと変わらず冷静沈着に、 淡々と質疑に応答している。 
そして、 予定の時間を大幅にオーバーして会議は終わった。
使用した書類等を片付け、 量も多かったので高橋さんも手伝ってくれていると、 ドア付近から高橋さんを呼ぶ声が聞こえた。
「高橋君」
「はい!」
声のする方を見ると、 そこには社長が立っていた。
「それが終わってからで構わないから、 帰りにちょっと社長室に寄ってくれるか?」
「はい。 承知しました」
その後、 高橋さんは使用した書類をまとめて半分以上を自分で抱え、 残りの僅かな量を私に渡した。
「先に、 戻ってて」
そう告げると、 そのまま社長室へと向かった。
社長室……。
昔、 呼ばれて……髙橋さんと一緒に行ったことがあった。 エレベーターを待っている間、 そんな事を思い出していた。
事務所に戻り、 持って帰ってきた書類を元に戻して、 小山と化した机の上の書類の山を片付け始めていると、 暫くして社長室から高橋さんも戻ってきて、 抱えていた書類を机の上に置いた。 書類の量も多かったせいか、 高橋さんの置いた書類の山が雪崩を起こして床に散らばった。 慌てて椅子から立ち上がり、 散らばってしまった書類を一緒に拾う。
< 89 / 112 >

この作品をシェア

pagetop