新そよ風に乗って 〜慕情 vol.2〜
本当に、 久しぶりだった。 ハワイから帰って来てからデートもしていなかったし、 一緒に帰れるのも凄く久しぶりだった。 でも、 髙橋さんの体を思うと、 送ってもらうだけで十分だった。
「何? お前、 遠慮してるのか?」
うっ。
お見通しなの?
「い、 いいえ。 そんなことないです」
「俺のことを気遣ってくれるのは有り難いが、 お前に気遣われるほど俺は柔じゃない」
「髙橋さん……」
いつものように地下3階の駐車場に、 エレベーターで向かう。
高橋さんが、 助手席のドアを開けてくれた。
何日ぶりだろう? 
そのぐらい、 久しぶりだった。
結局、 髙橋さんには何もかもお見通しのようで、 食事をして帰ることになってしまった。
イタリアンレストランで食事をしている間、 高橋さんは疲れているのか、 あまり元気がなかった。
やっぱり、 まっすぐ帰ればよかった。
「大丈夫ですか?」
「何がだ?」
「あの……何か、 疲れていらっしゃるみたいなんで」
「ハハッ……。 お前に心配されるようじゃ、 おしまいだよ」
「酷い……髙橋さん。 人が心配しているのに……。 あっ! それとも、 何かお悩みでも?」
「フッ……。 そんな訳ないだろ? 俺の心配する前に、 自分のことを心配しろよ。 病院は、 ちゃんと行ってるのか?」
「はい。 ちゃんと行ってます。 それに、 もう来なくてもいいですって言われたんで、 大丈夫なんです」
「それは、 良かったな」
「はい。 ありがとうございます」
「そろそろ、 帰るか。 もう遅い」
「はい」
< 91 / 112 >

この作品をシェア

pagetop