奮闘記などと呼ばない (王道外れた異世界転生)
Part 1
Prologue
十歳で青天の霹靂――ではないが、今まで生きてきた人生がひっくり返った。
それも、180度の逆回転なのか、正回転なのか、どちらにしても、人生のターニングポイントとはよく言ったものだが、その程度で済まされるような状況でも度合いでもなかった。
あまりにあり得ない現実と、果ては、夢かお伽話とでも言われそうな人生の大転換を経て、セシル・ヘルバートとなった。ノーウッド王国ヘルバート伯爵家の長女である。
それから、怒涛の嵐のように――死に物狂いだったのか、今までの人生を一気に駆け抜けてきて、生き抜いて、生き延びた――といったものだろうか。
十五歳の終わりに、この手を、初めて血で染めた。
後悔は、していない。でも、身を染める血の匂いも、そして、手にかかる、跳ね返るような圧力に、押しやる渾身の力――――
絶対に、忘れはしない。忘れも、しない。
十七歳で、あまりに長かった(無駄な) 時間を費やして、やっと、待ち望んでいた婚約解消を成し遂げた。
侯爵家の能無しで高慢ちきのバカ息子。
長かった……。
十八歳で、婚約解消の埋め合わせとして、準伯爵の称号を得て、そして、コトレアの正式な女領主として任命された。
今までは、父であるヘルバート伯爵の名代として、“領主名代様”だった。
だが、やっと、今は正式な領主の任命を拝命した。
今までの――まだ短い人生で、出会った縁は数えきれない。そこから、拾った縁も広がっていった――未だ、広がっていっている。
良縁、悪縁、通りすがりの薄い縁。
そんなものを全部含めて、一期一会、とは、昔の人もよく言ったものである。
巡り合わせもそうだろうし、ただ記憶にも残らない一瞬だけの出来事もそうだろうし、哲学者になりきるつもりはないが、理屈っぽいのは、子供らしからぬ成長を大人として生き抜いてしまったからだろうか。
そして、やっと自由の身になれた私が、またこれからも、縁を広げていく。
運命は信じない。
どんな出来事でも、状況でも、それは、降ってきた機会や過程の一つに過ぎないのだから。そこから、自分自身がどう進んでいくか、どう転ぶか、それは本人次第であろうし、状況次第でもあろうし、それでも、最終的な決断は、いつも自分自身が決めることだろう。
自分自身が責任を取ることだろう。
今まで、そうやって、生きてきた。
生き抜いてきた。
今も尚、生き延びている。
これからの出会いで、今まで怒涛のような人生を生き抜いてきたセシル・ヘルバートに待ち受けている、待ち構えている出来事は、一体、どんなものなのだろうか。
“普通の幸せ”――そういった概念もすでに無縁だと思っていた。でも、否定するつもりはない。幸せの形は人それぞれだ。
だから、これからの出会いでセシル・ヘルバートがセシル・グルクスバーグと変わっていく出来事も、今の私はまだ知らないままだ。
そして、その出会いが、また、人生の大転換となるのか、吉と出るか凶と出るか、まだ誰にも分らない。
セシル・ヘルバート。
ヘルバート伯爵家長女、現在十八歳であり、未婚。準伯爵を拝命して、元伯爵家の一領地の女領主でる。
そのセシル・ヘルバートは――極一部の、最も親しい者達以外――誰も知らない秘密を抱えている。隠している。
それは、セシル・ヘルバートは、現世から――理由も分らず、異世界にひきずりこまれた――飛ばされた、前世の記憶を持つ異世界転生者――という事実だ。
それも、180度の逆回転なのか、正回転なのか、どちらにしても、人生のターニングポイントとはよく言ったものだが、その程度で済まされるような状況でも度合いでもなかった。
あまりにあり得ない現実と、果ては、夢かお伽話とでも言われそうな人生の大転換を経て、セシル・ヘルバートとなった。ノーウッド王国ヘルバート伯爵家の長女である。
それから、怒涛の嵐のように――死に物狂いだったのか、今までの人生を一気に駆け抜けてきて、生き抜いて、生き延びた――といったものだろうか。
十五歳の終わりに、この手を、初めて血で染めた。
後悔は、していない。でも、身を染める血の匂いも、そして、手にかかる、跳ね返るような圧力に、押しやる渾身の力――――
絶対に、忘れはしない。忘れも、しない。
十七歳で、あまりに長かった(無駄な) 時間を費やして、やっと、待ち望んでいた婚約解消を成し遂げた。
侯爵家の能無しで高慢ちきのバカ息子。
長かった……。
十八歳で、婚約解消の埋め合わせとして、準伯爵の称号を得て、そして、コトレアの正式な女領主として任命された。
今までは、父であるヘルバート伯爵の名代として、“領主名代様”だった。
だが、やっと、今は正式な領主の任命を拝命した。
今までの――まだ短い人生で、出会った縁は数えきれない。そこから、拾った縁も広がっていった――未だ、広がっていっている。
良縁、悪縁、通りすがりの薄い縁。
そんなものを全部含めて、一期一会、とは、昔の人もよく言ったものである。
巡り合わせもそうだろうし、ただ記憶にも残らない一瞬だけの出来事もそうだろうし、哲学者になりきるつもりはないが、理屈っぽいのは、子供らしからぬ成長を大人として生き抜いてしまったからだろうか。
そして、やっと自由の身になれた私が、またこれからも、縁を広げていく。
運命は信じない。
どんな出来事でも、状況でも、それは、降ってきた機会や過程の一つに過ぎないのだから。そこから、自分自身がどう進んでいくか、どう転ぶか、それは本人次第であろうし、状況次第でもあろうし、それでも、最終的な決断は、いつも自分自身が決めることだろう。
自分自身が責任を取ることだろう。
今まで、そうやって、生きてきた。
生き抜いてきた。
今も尚、生き延びている。
これからの出会いで、今まで怒涛のような人生を生き抜いてきたセシル・ヘルバートに待ち受けている、待ち構えている出来事は、一体、どんなものなのだろうか。
“普通の幸せ”――そういった概念もすでに無縁だと思っていた。でも、否定するつもりはない。幸せの形は人それぞれだ。
だから、これからの出会いでセシル・ヘルバートがセシル・グルクスバーグと変わっていく出来事も、今の私はまだ知らないままだ。
そして、その出会いが、また、人生の大転換となるのか、吉と出るか凶と出るか、まだ誰にも分らない。
セシル・ヘルバート。
ヘルバート伯爵家長女、現在十八歳であり、未婚。準伯爵を拝命して、元伯爵家の一領地の女領主でる。
そのセシル・ヘルバートは――極一部の、最も親しい者達以外――誰も知らない秘密を抱えている。隠している。
それは、セシル・ヘルバートは、現世から――理由も分らず、異世界にひきずりこまれた――飛ばされた、前世の記憶を持つ異世界転生者――という事実だ。