奮闘記などと呼ばない (王道外れた異世界転生)
* * *
それは深夜遅くに勃発した。
闇が深まり、暗闇だけが続き、人影もなければ、音もない。
なのに――その予期していない、攻撃が起こった。
襲ってきた。
最初は東南側にある領壁の検問所だった。
夜半が更け、周囲が静まり返ったその場で、検問所で警護をしていた兵士達が襲われた。
五十人近くの賊が――突然襲い掛かってきて、不意を突かれた兵士達が数人斬り落とされた。
バサッ――
グワァッ――――
大抵、夕方になると国境側の領壁にある検問所は門が閉まっている。
なのに、夜半を更けて、検問所の門が勝手に開いていた。内部にすでに潜入していた賊の仲間が、領内側から、国境の警備兵を斬り殺していたのだ。
突然襲われた警備兵は、領門内にいた兵士達だった。
すぐに、検問所の門が開かれ、五十人ほどもいる賊の集団が一気に押し入って来た。
そして、東南側の領門は占拠されてしまった。
まだ、領門の警護や塔に残っていた兵士が異変に気付き、緊急の鐘を狂ったように鳴らしながら、領門側に走り込んでいる。
だが、すでに五十人近くの賊が完全な戦闘態勢に入っていた。
走り込んできた十にもみたない兵士達は、賊に取り囲まれ、次々にその剣の餌食になっていく。
「――――ぐ……ぁっあ……!」
一人に数人が斬りかかってきて、兵士が次々に地面に伏していく。
30分もしないで、飛び出してきたアトレシア大王国の国境兵は全滅していた。
賊の男達は布で顔を覆った覆面をし、ここら近隣であまり馴染みのない変わった洋服を着ていた。
膝より少し長めの真っ直ぐなチューニックを羽織り、同じ生地でできた真っ直ぐなズボン。ただ、アラビア系の洋服とは違う点は、腰に腰紐が巻かれていて、その上に、肩から斜めに下げられた剣帯に剣。
警備兵を殲滅したことで、領門から賊の一人がかがり火を高く上げ、それを空で振り回す。
しばらくすると、国境の向こう側から――バラバラ、バラバラ、なにか地面を蹴り上げる勢いと騒音が迫ってきて、暗闇の中ではっきりと分るほどの――異様な塊が押し寄せて来たのだった。
バラバラ、バラバラ――――
バラバラ―――
騎馬に乗った兵士達が続々と現れ、アトレシア大王国の領門を潜り抜けていく。
長い行列になり、誰一人邪魔する者はいない。
一体――どれだけの賊? ――見るからに統率の取れた兵士達の一団――を連れて来たのかは知らないが、通常、荷馬車が一台程度入れるほどの領門の門をくぐり、整列した男達が騎乗したまま門を潜り抜けていったのだ。
かなりの行列が領門を潜り抜けていくと、領壁の周辺は賊の兵士達で溢れかえっていた。
ブレッカはアトレシア大王国の最南端の土地で、南の国境を護る最後の砦だった。
だが、南の小国ギリトル、南東の部族連合からの侵入により、いつも被害を受けている土地だ。
それで、領壁側の検問所を抜けても、今ではほとんど何もない土地だけが続く。
大昔にあったような家が手入れもされず錆びれて残っているが、民家には領民も住んでいない。
それからまた内門があって、そこを超えると、大抵は、アトレシア大王国の王国軍の兵士達が駐屯している駐屯地と化していた。
駐屯地を抜けると、まだ残っている商店街に入るが、領壁を造り国境としているのは、ブレッカの東南と南西寄りの南の二つだ。
この東南が攻められたとなると――簡単に考え得る結論は、東南の部族連合の侵入となってしまう。
だが、その何もない廃墟に集まった騎馬の数、兵士の数は、毎回、うるさいほどに起こる侵入や略奪行為などという次元ではなく――すでに、本格的な戦を持ち込んだ侵略戦争? ――とまで規模が膨れ上がっていたのではないだろうか。
カンカンカン――――!
うわあぁっ――――!
どうやら、一応、先程の緊急警報を受けてか、見逃さずか、内門を超えた先で、かなりの喧騒が上がりだした。
「さて、行くか」
「そうだな」
騎馬に乗っている兵士達がなんの気概もなく、自分達の剣を抜き放っていた。
内門――とは言っても、領壁のような頑丈な造りではない。
ただ、検問所と町を隔離する程度の柵が張られている程度だ。
「役にも立たないこんな土地。さっさと手放せば良いものを」
ホント、手間かけさせやがって――などとぼやく先陣を切る兵士達が、馬を走らせた。
柵の向こう側にはアトレシア大王国の王国軍の兵士達が――お休みの場から一応は目を覚ましたようである。
柵に向かって突進していくような先陣が、身軽に柵を飛び越えていく。
その間も抜かず、次々に騎馬の兵士達が柵に押し寄せ、ただ地面に立っているような柵は簡単にぺちゃんこに崩されていた。
「部族連合パーガトリーの参上だっ! てめーら全員、邪魔する奴は叩き斬るぜ」
戦時を切っていく数騎が大声を張り上げ、向かってきた兵士を剣の勢いと馬のスピードだけでなぎ倒す。
ワアアァっ――――!
グサッ、ジュワッ――――!
うわぁぁ……っっ――――!
その場は一気に戦場と化していた。
そこらで、騎馬の兵士達と攻防するアトレシア大王国の兵士達が入り乱れ、やっと戦闘支度を終えたような追加の兵士達が参戦し、馬が暴れ、暗闇なのに、そこらでかがり火が跳ね上がり、怒号が響き渡り、その周辺一帯――すでに地獄絵図のような、激しく恐ろしい血飛沫だけが舞い散っていた。
「――――ひぃっ……!――待ってくれっ――!」
「誰が待つか。バカがっ」
また一人の兵士が無残に斬り殺されていた。
「――待ってくれっ――待って――どうか……助けてくれ。慈悲だけでも――」
「そんなものあるか――」
ブシュッ――――
無慈悲どころか、同情もなく、部族連合の兵士が剣を振り上げる。反撃する間もなく、アトレシア大王国の兵士が地面に伏した。
この夜、突然の侵入者によって、ブレッカの東南側に駐屯していたアトレシア大王国の兵士達は、全軍出撃する羽目になる。
夜明けが近づき、日が昇り始めても、激しい勢いだけは止まらず、部族連合の兵士達がアトレシア大王国の兵士達を返り討ちにし、内門近辺では――山のような屍が積み上がっていった。
部族連合は侵略攻撃の手は緩めないが、内門近辺で、戦場を広げる様子もなく、陣地を拡張する様子もない。
ただ、向かってくるアトレシア大王国の兵士達を返り討ちにし、陣取った場所で――完全な冷酷で無情の殺戮が繰り広げられていたのだ。
「――――申し上げますっ! 第三小隊から第十小隊まで部族連合の制圧に向かいましたが、かなりの苦戦の模様。すでに、半分以上の兵士達が殲滅――」
「なんだとっ――――!!」
「やっと確認が取れたようですが――部族連合は、千人近くの兵士をつぎ込んできた模様です――」
焦った様相を隠しもせず、駐屯地で緊急召集をかけた指揮官の顔が青ざめていく。
「残りの全兵士を注ぎ込めっ――!なんとしても、これ以上の部族連合の侵入を許すな――」
「わかりましたっ――」
報告に飛び込んできた兵士が焦り顔のまま、また飛び出していた。
「これは援軍が必要でしょう――」
「そうだ、そうだ。今すぐ援軍を――」
その場に集まって来ていた上級士官達の顔にも焦りの色が濃く浮き上がりだしていた。
ブレッカに駐屯している国王軍の最高司令官は、今の所、大尉だ。そして、中尉が数人いて、東南の国境と南の国境を任されていることになっている。
「今すぐ、ダーマン中尉に援軍の要請をしろっ。それから、王宮にも緊急非常事態の早馬を飛ばせっ――」
口早に大尉が命令してきて、深刻な面持ちの兵士達が頷いて部屋を飛び出した。
だが――ここで重要なのは、国境を任されているはずの大尉を含め、その場に召集された上級士官達全員が、全く現状把握をしていないという重大な問題点だった。
夜半遅く、突然、襲われたショックで混乱しているのは理解できても、国境を任された王国軍の兵士である。
それは深夜遅くに勃発した。
闇が深まり、暗闇だけが続き、人影もなければ、音もない。
なのに――その予期していない、攻撃が起こった。
襲ってきた。
最初は東南側にある領壁の検問所だった。
夜半が更け、周囲が静まり返ったその場で、検問所で警護をしていた兵士達が襲われた。
五十人近くの賊が――突然襲い掛かってきて、不意を突かれた兵士達が数人斬り落とされた。
バサッ――
グワァッ――――
大抵、夕方になると国境側の領壁にある検問所は門が閉まっている。
なのに、夜半を更けて、検問所の門が勝手に開いていた。内部にすでに潜入していた賊の仲間が、領内側から、国境の警備兵を斬り殺していたのだ。
突然襲われた警備兵は、領門内にいた兵士達だった。
すぐに、検問所の門が開かれ、五十人ほどもいる賊の集団が一気に押し入って来た。
そして、東南側の領門は占拠されてしまった。
まだ、領門の警護や塔に残っていた兵士が異変に気付き、緊急の鐘を狂ったように鳴らしながら、領門側に走り込んでいる。
だが、すでに五十人近くの賊が完全な戦闘態勢に入っていた。
走り込んできた十にもみたない兵士達は、賊に取り囲まれ、次々にその剣の餌食になっていく。
「――――ぐ……ぁっあ……!」
一人に数人が斬りかかってきて、兵士が次々に地面に伏していく。
30分もしないで、飛び出してきたアトレシア大王国の国境兵は全滅していた。
賊の男達は布で顔を覆った覆面をし、ここら近隣であまり馴染みのない変わった洋服を着ていた。
膝より少し長めの真っ直ぐなチューニックを羽織り、同じ生地でできた真っ直ぐなズボン。ただ、アラビア系の洋服とは違う点は、腰に腰紐が巻かれていて、その上に、肩から斜めに下げられた剣帯に剣。
警備兵を殲滅したことで、領門から賊の一人がかがり火を高く上げ、それを空で振り回す。
しばらくすると、国境の向こう側から――バラバラ、バラバラ、なにか地面を蹴り上げる勢いと騒音が迫ってきて、暗闇の中ではっきりと分るほどの――異様な塊が押し寄せて来たのだった。
バラバラ、バラバラ――――
バラバラ―――
騎馬に乗った兵士達が続々と現れ、アトレシア大王国の領門を潜り抜けていく。
長い行列になり、誰一人邪魔する者はいない。
一体――どれだけの賊? ――見るからに統率の取れた兵士達の一団――を連れて来たのかは知らないが、通常、荷馬車が一台程度入れるほどの領門の門をくぐり、整列した男達が騎乗したまま門を潜り抜けていったのだ。
かなりの行列が領門を潜り抜けていくと、領壁の周辺は賊の兵士達で溢れかえっていた。
ブレッカはアトレシア大王国の最南端の土地で、南の国境を護る最後の砦だった。
だが、南の小国ギリトル、南東の部族連合からの侵入により、いつも被害を受けている土地だ。
それで、領壁側の検問所を抜けても、今ではほとんど何もない土地だけが続く。
大昔にあったような家が手入れもされず錆びれて残っているが、民家には領民も住んでいない。
それからまた内門があって、そこを超えると、大抵は、アトレシア大王国の王国軍の兵士達が駐屯している駐屯地と化していた。
駐屯地を抜けると、まだ残っている商店街に入るが、領壁を造り国境としているのは、ブレッカの東南と南西寄りの南の二つだ。
この東南が攻められたとなると――簡単に考え得る結論は、東南の部族連合の侵入となってしまう。
だが、その何もない廃墟に集まった騎馬の数、兵士の数は、毎回、うるさいほどに起こる侵入や略奪行為などという次元ではなく――すでに、本格的な戦を持ち込んだ侵略戦争? ――とまで規模が膨れ上がっていたのではないだろうか。
カンカンカン――――!
うわあぁっ――――!
どうやら、一応、先程の緊急警報を受けてか、見逃さずか、内門を超えた先で、かなりの喧騒が上がりだした。
「さて、行くか」
「そうだな」
騎馬に乗っている兵士達がなんの気概もなく、自分達の剣を抜き放っていた。
内門――とは言っても、領壁のような頑丈な造りではない。
ただ、検問所と町を隔離する程度の柵が張られている程度だ。
「役にも立たないこんな土地。さっさと手放せば良いものを」
ホント、手間かけさせやがって――などとぼやく先陣を切る兵士達が、馬を走らせた。
柵の向こう側にはアトレシア大王国の王国軍の兵士達が――お休みの場から一応は目を覚ましたようである。
柵に向かって突進していくような先陣が、身軽に柵を飛び越えていく。
その間も抜かず、次々に騎馬の兵士達が柵に押し寄せ、ただ地面に立っているような柵は簡単にぺちゃんこに崩されていた。
「部族連合パーガトリーの参上だっ! てめーら全員、邪魔する奴は叩き斬るぜ」
戦時を切っていく数騎が大声を張り上げ、向かってきた兵士を剣の勢いと馬のスピードだけでなぎ倒す。
ワアアァっ――――!
グサッ、ジュワッ――――!
うわぁぁ……っっ――――!
その場は一気に戦場と化していた。
そこらで、騎馬の兵士達と攻防するアトレシア大王国の兵士達が入り乱れ、やっと戦闘支度を終えたような追加の兵士達が参戦し、馬が暴れ、暗闇なのに、そこらでかがり火が跳ね上がり、怒号が響き渡り、その周辺一帯――すでに地獄絵図のような、激しく恐ろしい血飛沫だけが舞い散っていた。
「――――ひぃっ……!――待ってくれっ――!」
「誰が待つか。バカがっ」
また一人の兵士が無残に斬り殺されていた。
「――待ってくれっ――待って――どうか……助けてくれ。慈悲だけでも――」
「そんなものあるか――」
ブシュッ――――
無慈悲どころか、同情もなく、部族連合の兵士が剣を振り上げる。反撃する間もなく、アトレシア大王国の兵士が地面に伏した。
この夜、突然の侵入者によって、ブレッカの東南側に駐屯していたアトレシア大王国の兵士達は、全軍出撃する羽目になる。
夜明けが近づき、日が昇り始めても、激しい勢いだけは止まらず、部族連合の兵士達がアトレシア大王国の兵士達を返り討ちにし、内門近辺では――山のような屍が積み上がっていった。
部族連合は侵略攻撃の手は緩めないが、内門近辺で、戦場を広げる様子もなく、陣地を拡張する様子もない。
ただ、向かってくるアトレシア大王国の兵士達を返り討ちにし、陣取った場所で――完全な冷酷で無情の殺戮が繰り広げられていたのだ。
「――――申し上げますっ! 第三小隊から第十小隊まで部族連合の制圧に向かいましたが、かなりの苦戦の模様。すでに、半分以上の兵士達が殲滅――」
「なんだとっ――――!!」
「やっと確認が取れたようですが――部族連合は、千人近くの兵士をつぎ込んできた模様です――」
焦った様相を隠しもせず、駐屯地で緊急召集をかけた指揮官の顔が青ざめていく。
「残りの全兵士を注ぎ込めっ――!なんとしても、これ以上の部族連合の侵入を許すな――」
「わかりましたっ――」
報告に飛び込んできた兵士が焦り顔のまま、また飛び出していた。
「これは援軍が必要でしょう――」
「そうだ、そうだ。今すぐ援軍を――」
その場に集まって来ていた上級士官達の顔にも焦りの色が濃く浮き上がりだしていた。
ブレッカに駐屯している国王軍の最高司令官は、今の所、大尉だ。そして、中尉が数人いて、東南の国境と南の国境を任されていることになっている。
「今すぐ、ダーマン中尉に援軍の要請をしろっ。それから、王宮にも緊急非常事態の早馬を飛ばせっ――」
口早に大尉が命令してきて、深刻な面持ちの兵士達が頷いて部屋を飛び出した。
だが――ここで重要なのは、国境を任されているはずの大尉を含め、その場に召集された上級士官達全員が、全く現状把握をしていないという重大な問題点だった。
夜半遅く、突然、襲われたショックで混乱しているのは理解できても、国境を任された王国軍の兵士である。