マフィアのお兄ちゃん、探してます

Who are you?

「まふゆ、にぃ……?」
俺の問いかけに、真生さんはすっと目を逸らして俺からメガネを取り返す。
カチャリとメガネをかけ直し、真生さんはこほんと咳払いを1つ入れた。
「残念ながら……私は白露様の捜している『真冬』ではないんです」
「いや……絶対にウソ……そんなはずない。どう見ても……貴方は真冬兄、でしょ……?」
頭が混乱し始め、ぎゅっと拳を握り締める。
「申し訳ございません……」
「ウソつかないで!!」
咄嗟に俺はそう叫んで、真生さんに抱きついた。
「真冬兄っ……まふにっ……まふゆにぃ……!」
ボロボロと涙が零れてくる。
「……参ったなぁ……」
真生さんがそう呟いた気がして、顔を上げる。
「白露様……いや、はく」
はく。それは……親しい人しか呼ばない、俺のあだ名で___。
「心配かけてごめんな。俺は、真冬の双子の弟なんだ」
真冬兄の……双子の、弟……?
「真冬に口止めされててなかなか言い出せなかったけど……実はアイツの弟なんだよ」
このひとが……真冬兄の、弟……?
「ぇは……」
「ん?」
「名前は……」
「そのままだよ。俺は来栖真生」
真生さんがそう言った瞬間、俺は真生さんのみぞおちを狙って思いっきり蹴り飛ばした。



「ってぇ……」
お腹を抱えてその場にうずくまる真生さん。
俺は冷めた目で彼を睨みつける。
「んで、こんなこと……」
「お前は俺の家族なんかじゃない」
きっかけはいくつかあった。
まず、顔に整形したような跡があったこと。真冬兄にはないホクロがほっぺにあったこと。
極めつけは、真生さんにしたあの質問。
『名前はなんですか』という質問。
もう気づいている人もいるかもしれないけれど、俺たち兄弟の名前は、生まれた月と合うような季節の入った名前がつけられている。
真生、には季節の言葉がないから。
ちなみに白露は秋の二十四節気からでーす。
真生さんを残してトイレを出ようとしたとき。
「待ちな」
「なんですか……」
後ろから声をかけられて、振り返る。
たっと地面を蹴って、後ろの人物から距離をとった瞬間、後ろでバチッと音が響く。
「っ!?」
「あれ、意外と反応早いね」
ケロッとしている知らない男の人。
髪はレモン色で、目は薄くピンクがかった白。
……誰。
真っ先にそう浮かび、半分呆れて彼を見る。
彼の手にしっかりと握られていたのはスタンガン。
……この人、アールアールじゃなさそう。
どうやって入り込んだんだろう……。
制服をよく見ると、アールアールの刺繍が消えていた。
やっぱり。どうやって手に入れたかは知らないけれど、不審者っていうことは確定した。
「おらぁ!」
殴りかかってきたレモン髪くんの攻撃をうまいこと避けて、彼の首元を後ろから叩く。
「っ、ぐ……!」
彼の意識が無くなったことを確認して、バッグから手錠を取り出した。
これは湊からのアールアール加入記念にもらったプレゼント。
『はくは力弱いし敵から絶対に舐められるから一応持っといて!』って念押しされて、いつもバッグに入れていた。
まさかこんなところで役に立つとは……。
しっかり手錠をかけて、スマホを操作する。
時折レモン髪くんを見ながら湊に通話を繋げる。
「もしもし、湊?今さぁ……」
簡単に事情を説明して、迎えに来てもらうことに。
やって来た湊は笑いながらレモン髪くんの手錠を外して俺に渡すと、彼を引っ張って行った。
真生さんも、湊の持ってきた縄でしっかり縛って、海くんが連れて行ってくれた。
柊馬くんがリビングまで着いてきてくれるみたいで、2人で話しながら歩く。
海くんは意外と好き嫌いが多い、とか。
湊はいつも柊馬くんたちを笑わせてくれる存在なんだ、とか。
悠里くんは女子力が高めで、学校に持っていくお弁当は手作りなんだ、とか。
星願は仕事のときは相手にわざと舐められるようにウィッグを被って女の子に見せているらしい、とか。
ギャップが過ぎたけれど、面白かったから問題無し!
リビングで悠里くんがココアを入れて待っていてくれた。
あったかくてほかほかなココア。
それを飲んで過ごしていると、星願が仕事から戻ってきた。
柊馬くんの説明通り、体のラインか見えないようなぶかぶかの服を着ていて、水色の髪のロングヘアーウィッグをなびかせて現れたので、思わず爆笑してしまった。
俺の髪色にぴったりなウィッグもあったので、つけて2人で自撮りをしてみることに。
加工をつけたら、どこからどう見てもJKにしか見えなくて草(笑笑)。


P.S.
後日わかったことを書きます。
あの真生さんは、どうやら偽物だったらしい。
俺の目の前に現れる前の何らかの時間で本物の真生さんと入れ替わり、俺に話しかけてきた、というのが湊の推測。
偽真生さんは未だ情報を吐いていないとのこと。
やっぱりあの顔は真冬兄そっくりに整形したらしい!最低!!
以上です!
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