マフィアのお兄ちゃん、探してます
真実?【side湊】
「……あ、湊」
自販機にコインを入れて、どれにしようか迷っていたとき。
真宮とたまたま出会ってしまった。
「……」
無視してドリンクを選んでいると、後ろからボタンを押される。
ピッと軽い音をたてて、ゴトンと飲み物が落ちる。
「え"っ!?」
真宮は飲み物を取って、ぺろりと舌を出す。
「ごめんね。これ俺のオススメ。きっと千秋も好きだよ」
飲み物をよく見ると、『ミルク×砂糖! 甘いカフェオレ』。
カフェオレなら、千秋も好きか。
真宮からカフェオレを受け取る。
「じゃあね」
そう言って立ち去ろうとした真宮の腕を掴む。
ギロリと睨みつけると、真宮は一瞬怯んだような顔をして、すぐに笑顔を見せる。
「もー、どうしたのさ?」
「聞きたいことがある」
真宮はくすりと微笑んで、俺の手をとって、指を絡ませてきた。
っ!?
「ふふっ、恋人繋ぎ〜」
「何すんだよ!」
ほどこうとしてもほどけない。
こいつ……意外に力強い……っ。
普段から力を制御して、弱く見せてるのか……?
そう思うぐらい強かった。
さすが年上、と言わざるを得ないけど。
俺は……一応アールアールの幹部なのに……。
はぁっとため息をついて、手を引かれるまま歩いて行く。
「着いた〜っ」
ここは……あまり人が来ない渡り廊下。
「こんなとこに連れてきて、何するつもりなんだよ」
真宮を壁に押し付けて、尋ねる。
「気になる?」
次の瞬間、ぐるりと視界が反転。
「っ!?」
今度は俺が劣勢に……っ。
「教えてあげるよ。バルーンチャートはね、千秋をバルーンチャートにスカウトしたいの」
は?
千秋を……スカウト!?
「千秋は強いし、バルーンチャートに入るに申し分ない。それに、千秋がバルーンチャートに入ったら、千秋のお兄ちゃんたちも入ってくれるでしょ?」
妖艶な笑みを浮かべて、そっと俺から手を離した真宮。
「それと、真宮ってやめてよ。また前みたいに、月羅って呼んでくれない?」
「……気が向いたらな」
素っ気ない言葉を返すと、また笑顔になる。
この人、どんだけ笑うんだ……。
「あーあ、千秋、バルーンチャート入らないかなぁ〜」
その言葉にイラッとくる。
「千秋は一生アールアールだよ」
「どーだろーね?」
真宮は俺の耳にそっと口を寄せてきて。
「……だよ」
……っ!?
「じゃあね〜湊!」
にこやかに退散していく真宮を呆然と見つめる。
俺の脳みそが、考えることを拒んでいるみたいに思考が鈍い。
だって……だって。
千秋のお兄さんが……近くにいるなんて。
もちろん、ウソの可能性だってある。
その可能性の方が高いはずだ。
……そうだよ、あれはただ、俺をビビらすためのハッタリなはず。
俺はそう自分を納得させて、図書室に戻るために廊下を歩き始めたのだった。