マフィアのお兄ちゃん、探してます

お互い様

んー……!
よく寝たぁ……!
大きく伸びをしながら体を起こす。
……あれ?どこここ……アジト?
キョロキョロ辺りを見回して、ハッと思い出した。
そうだ……お兄ちゃん達を見つけるまでここに監禁されたんだった。
「おはよう、あき」
あき?
「千秋のあきだろ。オレいっつも白露のことはくって呼んでたじゃんか」
確かに……ニックネーム的なってことか。
そのとき、ぐぅっと俺のお腹が悲鳴をあげた。
ってか、昨日色々あって忘れてたけど……夜ご飯食べてないじゃん……!
結局夜ご飯とか食べさせてもらえなかったけど……朝ごはんとかはない感じかな……。
そう思っていると、放送が鳴った。
『おっはよー、みんな! 朝ごはん提供するよーん!』
ガチャリと放送が切れ、すぐに月羅が顔を出す。
「おはよー!はい、朝ごはんだよ〜!」
配られたのは、菓子パンとおにぎり、ペットボトルの水。
あとは……グミの袋?
「今日はそれだけ支給〜。また夜ねぇー!」
え"っ。
これだけ!?
「……みんな急いで、サイフ持って近くの自販で水とスポドリ買い占めてきて!」
悠里がそう叫んで自分のサイフを掴む。
……なるほど。
悠里の考えが読めた。
慌てて自分のサイフを握りしめ、リビングからは少し遠くにある自販機まで走る。
はぁっ、はぁ……。
息を荒らげながらコインを入れ、水と麦茶とスポドリをそれぞれ3つずつ買う。
すげぇ……自販にこんなにつぎ込んだことないわ……。
ペットボトルをしっかりと抱えて戻ると、ため息をついている暗い顔をした海に出くわした。
「はく……千秋、水買えたの!?」
「うん。麦茶とスポドリも買ってきたよ」
そう言ってこくりと頷く。
「それ、どこの自販!?」
「えっと……薬草室の近くのとこ」
「おっけ、ありがとう!」
海が走り去るのを見送り、リビングに戻る。
「ただいま〜」
あれ、誰もいない……?
ペットボトルをテーブルに置いて、ソファーにそっと寝そべる。
「あー……疲れた……」
「それはそれは、お疲れ様です」
っ!?
びくりと立ち上がる。
誰……!?
声のした方を見ると、悠里がドアの所に立っていて。
「なんだぁ、悠里か〜」
悠里は眉を若干ひそめながらガチャリとドアの鍵を閉めた。
「……なんで閉めんの?」
「千秋と、2人っきりで話がしたいから」
こんな怖い顔した悠里……見たことない。
「千秋……俺らに、まだ隠してることあんだろ」
ぐっと唇を噛む。
「そんなことないけど……」
「とぼけんな!」
怒鳴られた。悠里に。
ソファーに押し倒されて、すっと血の気が引いた。
……やばい。
「お前……さっさと吐けよ!」
悠里……"お互いサマ"、だね。
ドンッと悠里の首筋を強く叩く。
「……っ」
悠里が気を失ったのを確認し、そっとソファーを離れる。
さて……起きたらどう誤魔化そっかな。
グミを口に入れながら、みんなが戻ってくるのを待った。
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