マフィアのお兄ちゃん、探してます
㊙︎
俺は飲み物を買いに、走って自販機まで向かっていた。
はぁ、はぁっ……。
息を切らせながらたどり着いたひとつの自販機。
投入口にコインを押し込み、少し迷ってからスポーツドリンクのボタンを押す。
ピッと気の抜けるような音が響いて、ガコンとペットボトルが落ちる。
よっしゃ……!ここはまだ使えるんだ。
飲み物をたくさん買って、駆け足でリビングへと戻る。
「あっ、海くーん!」
名前を呼ばれて振り返ると、そこにいたのは長方形のネックレスをつけた男の人。
えっと確か……月羅さん、じゃなかったっけ。
月羅さんが走る度に、紺色のフードが揺れる。
「何の用ですか」
目を細めて多少キツめに睨めつけると、苦笑ぎみに微笑む彼。
「そんなにツンツンしないでよ〜」
この人、苦手だ……。
何考えてるか、全然読めない。
……怖い。
率直にそう思う。
目の奥深くを覗き込むように見つめていると、月羅さんはふっと軽く笑う。
「海くんはほんといいコだよねぇ〜」
わしゃわしゃと頭を撫で回される。
「何しに、きたんですか……」
「ん? ちょっと、いいこと教えてあげようかな〜って」
そう言うと月羅さんはそっと俺の耳元に口を寄せてきて。
「速水星願くん。あの子もなんか隠してることあるよ」
っ、は?
星願、が……?
「まぁ、信じるも信じないも君次第……」
妖艶な笑みを残して、手を振りながら立ち去っていく月羅さん。
今の……本当?
今すぐ誰かに相談したくて。
星願に確かめたくて。
俺は慌てて来た道を急ぎ足で辿っていく。
一体……バルーンチャートは何がしたいんだ。
俺らを引っ掻き回して……仲間割れを誘っているようにしか……。
さすがに息が切れてきたので立ち止まり、あごに手を当てて考える。
どういうことだ……。
俺らが仲間割れすればするほど協力性や協調性が減り、千秋のお兄さん達を見つけられる可能性は下がるはずなのに……。
はぁっとため息をついて、意味もなく蛍光灯を眺めた。
……あ。
もしかして……トイレなら、窓開いてるのでは!?
突如そんな考えに至り、慌ててメモ用の紙とペンを取り出す。
トイレの個室に入ってペンを走らせる。
『アールアールの者です。今このアジト内は、バルーンチャートに占拠されています。関係者は対応の方をよろしくお願い致します』
よし。簡潔。
窓を開けると、灰色のコンクリートの壁がそり立っている。
紙飛行機型に折って、そっと風にのせて飛ばす。
誰かに届け……という思いで。
そしてまた、リビングまで全力で走り始める。
はぁ……疲れた……。
リビングのドアに手をかけて、入ろうとしたとき。
『〜〜?』
『〜〜!』
?……何?
2人の話し声……誰?
こっそり裏に回り込み、裏口のドアを少しだけ開ける。
『お前……さっさと吐けよ!!』
っ!?
やばい、千秋が押し倒されてる……!
何をしたかはわからないけど、やばい気がする……!
慌てて飛び出そうとすると、ドサッと音が響く。
ん?
『やめてよ……もう』
ボソリとそう呟いた千秋。
くしゃりと髪をかき上げる。
その目は__秋に開く紅葉のような、はたまた女の身につけるからくれない色の紅のような。
……そんな赤い瞳。
血走っているのかは知らないけど、元々はあんな色じゃないはず。
大きく深呼吸をして、また表口へと進み出した。
はぁ、はぁっ……。
息を切らせながらたどり着いたひとつの自販機。
投入口にコインを押し込み、少し迷ってからスポーツドリンクのボタンを押す。
ピッと気の抜けるような音が響いて、ガコンとペットボトルが落ちる。
よっしゃ……!ここはまだ使えるんだ。
飲み物をたくさん買って、駆け足でリビングへと戻る。
「あっ、海くーん!」
名前を呼ばれて振り返ると、そこにいたのは長方形のネックレスをつけた男の人。
えっと確か……月羅さん、じゃなかったっけ。
月羅さんが走る度に、紺色のフードが揺れる。
「何の用ですか」
目を細めて多少キツめに睨めつけると、苦笑ぎみに微笑む彼。
「そんなにツンツンしないでよ〜」
この人、苦手だ……。
何考えてるか、全然読めない。
……怖い。
率直にそう思う。
目の奥深くを覗き込むように見つめていると、月羅さんはふっと軽く笑う。
「海くんはほんといいコだよねぇ〜」
わしゃわしゃと頭を撫で回される。
「何しに、きたんですか……」
「ん? ちょっと、いいこと教えてあげようかな〜って」
そう言うと月羅さんはそっと俺の耳元に口を寄せてきて。
「速水星願くん。あの子もなんか隠してることあるよ」
っ、は?
星願、が……?
「まぁ、信じるも信じないも君次第……」
妖艶な笑みを残して、手を振りながら立ち去っていく月羅さん。
今の……本当?
今すぐ誰かに相談したくて。
星願に確かめたくて。
俺は慌てて来た道を急ぎ足で辿っていく。
一体……バルーンチャートは何がしたいんだ。
俺らを引っ掻き回して……仲間割れを誘っているようにしか……。
さすがに息が切れてきたので立ち止まり、あごに手を当てて考える。
どういうことだ……。
俺らが仲間割れすればするほど協力性や協調性が減り、千秋のお兄さん達を見つけられる可能性は下がるはずなのに……。
はぁっとため息をついて、意味もなく蛍光灯を眺めた。
……あ。
もしかして……トイレなら、窓開いてるのでは!?
突如そんな考えに至り、慌ててメモ用の紙とペンを取り出す。
トイレの個室に入ってペンを走らせる。
『アールアールの者です。今このアジト内は、バルーンチャートに占拠されています。関係者は対応の方をよろしくお願い致します』
よし。簡潔。
窓を開けると、灰色のコンクリートの壁がそり立っている。
紙飛行機型に折って、そっと風にのせて飛ばす。
誰かに届け……という思いで。
そしてまた、リビングまで全力で走り始める。
はぁ……疲れた……。
リビングのドアに手をかけて、入ろうとしたとき。
『〜〜?』
『〜〜!』
?……何?
2人の話し声……誰?
こっそり裏に回り込み、裏口のドアを少しだけ開ける。
『お前……さっさと吐けよ!!』
っ!?
やばい、千秋が押し倒されてる……!
何をしたかはわからないけど、やばい気がする……!
慌てて飛び出そうとすると、ドサッと音が響く。
ん?
『やめてよ……もう』
ボソリとそう呟いた千秋。
くしゃりと髪をかき上げる。
その目は__秋に開く紅葉のような、はたまた女の身につけるからくれない色の紅のような。
……そんな赤い瞳。
血走っているのかは知らないけど、元々はあんな色じゃないはず。
大きく深呼吸をして、また表口へと進み出した。