マフィアのお兄ちゃん、探してます
偽りの姿
はぁ……。
ため息をついて、何処へ行くわけでもなく歩く。
これから……どうしよう。
戻ったところで……また根掘り葉掘り聞かれるに決まってる。
絶対にいやだ……。
"アレ"だけは。
絶対にバレちゃいけない。
ぐっと拳を握る。
頭を冷やそうと、こっそりシャワー室へ向かった。
リビングから1番離れている第1シャワー室。
服を脱いで、カゴに放り込む。
しゅるりとサラシを取る。
まず最初に熱湯を浴びた。
「あっつ……」
顔を顰めながら、栓を捻り、冷水にする。
頭から思いっきり浴びて、頭を冷やす。
はぁ……。
寒いけれど、これが1番、物理的にも脳的にも頭が冷える。
「んっ……」
備え付けのバスタオルで身体を拭いて、頭をぐしゃぐしゃっと拭く。
小さめのタオルを肩に掛けて、使ったバスタオルを洗濯機に突っ込む。
ついでに服も洗濯しよ……。
誰でも借りていい用の制服を着て、自分の服も入れる。
ボタンを押すと、ゴゥンと音がして、洗濯機が回り始める。
はぁ……。
もう何度目かわからないため息を吐き出す。
鏡の前に座り、自分の目の色をじっと見つめる。
青……空色……紺色……。
そう言えば、目の色もお兄ちゃんと一緒で……。
お兄ちゃん……。
髪の毛から垂れてきた水を拭いて、そっと水を汲む。
力いっぱい飲み干して、バッと顔を上げた。
くよくよするな、千秋!!
お前はまだやることがたくさんあるだろーが。
もう出来ないとか、弱音吐いてんじゃねぇぞ。
自分を叱責して、立ち上がる。
鏡の中の俺は……やっぱり泣いていて。
情緒不安定すぎるな……と、自虐的に微笑む。
「俺は…………」
偽名を使いすぎて、日に日にすり減っていく本名。
「もう……」
お兄ちゃんの仕事のせいで、友達は常にリセット状態。
「疲れたよ……」
常に流行りの服や髪型。
作り出したいい子ちゃんの俺。
大体テンプレの自己紹介。
髪型もメイクも服装も、時には年齢だって性別だって偽る。
"今の姿"だって。
ほとんど嘘でできているようなものだ。
自分の顔に手をかけて、ビリッと破る。
「ふぅ……」
久しぶりの素顔。
やっぱりこれが自分の顔だ、ってハッキリとはわからないけど、安心できる顔。
だってお兄ちゃんたちと同じ顔だから。
貼り付けていたマスクをゴミ箱に突っ込む。
脱衣所の鍵が閉まっているのを確認し、スマホを持ってシャワー室に閉じこもる。
久しぶりにお兄ちゃんの繋がらないトーク画面を開き、メッセージを打つ。
『正体バレそう』
『助けて』
送信っと。
すると、一瞬でついた既読。
「っ、え!?」
思わずスマホを落としそうになり、慌てて手に力を入れた。
どういうこと?
なんで……今?
とりあえず蒼太兄に連絡……!
『蒼太兄』
『どうした?』
『なんか立夏兄と真冬兄にLINEしたら既読ついた』
そうメッセージを送り、一旦シャワー室から出て、脱衣所からタオルを数枚取る。
シャワー室の床に敷いて、簡易お布団の完成!
もう数枚取って、さらに床に重ねていく。
今日はもうここで寝よーっと。
あくびを噛み殺しながらスマホを見る。
あ、蒼太兄からLINE。
『なんて言ってた?』
えぇっと……。
『何も』
『ただ既読がついただけっぽい』
連続でそう送り、また明日ね、と付け足してから眠りについた。
ため息をついて、何処へ行くわけでもなく歩く。
これから……どうしよう。
戻ったところで……また根掘り葉掘り聞かれるに決まってる。
絶対にいやだ……。
"アレ"だけは。
絶対にバレちゃいけない。
ぐっと拳を握る。
頭を冷やそうと、こっそりシャワー室へ向かった。
リビングから1番離れている第1シャワー室。
服を脱いで、カゴに放り込む。
しゅるりとサラシを取る。
まず最初に熱湯を浴びた。
「あっつ……」
顔を顰めながら、栓を捻り、冷水にする。
頭から思いっきり浴びて、頭を冷やす。
はぁ……。
寒いけれど、これが1番、物理的にも脳的にも頭が冷える。
「んっ……」
備え付けのバスタオルで身体を拭いて、頭をぐしゃぐしゃっと拭く。
小さめのタオルを肩に掛けて、使ったバスタオルを洗濯機に突っ込む。
ついでに服も洗濯しよ……。
誰でも借りていい用の制服を着て、自分の服も入れる。
ボタンを押すと、ゴゥンと音がして、洗濯機が回り始める。
はぁ……。
もう何度目かわからないため息を吐き出す。
鏡の前に座り、自分の目の色をじっと見つめる。
青……空色……紺色……。
そう言えば、目の色もお兄ちゃんと一緒で……。
お兄ちゃん……。
髪の毛から垂れてきた水を拭いて、そっと水を汲む。
力いっぱい飲み干して、バッと顔を上げた。
くよくよするな、千秋!!
お前はまだやることがたくさんあるだろーが。
もう出来ないとか、弱音吐いてんじゃねぇぞ。
自分を叱責して、立ち上がる。
鏡の中の俺は……やっぱり泣いていて。
情緒不安定すぎるな……と、自虐的に微笑む。
「俺は…………」
偽名を使いすぎて、日に日にすり減っていく本名。
「もう……」
お兄ちゃんの仕事のせいで、友達は常にリセット状態。
「疲れたよ……」
常に流行りの服や髪型。
作り出したいい子ちゃんの俺。
大体テンプレの自己紹介。
髪型もメイクも服装も、時には年齢だって性別だって偽る。
"今の姿"だって。
ほとんど嘘でできているようなものだ。
自分の顔に手をかけて、ビリッと破る。
「ふぅ……」
久しぶりの素顔。
やっぱりこれが自分の顔だ、ってハッキリとはわからないけど、安心できる顔。
だってお兄ちゃんたちと同じ顔だから。
貼り付けていたマスクをゴミ箱に突っ込む。
脱衣所の鍵が閉まっているのを確認し、スマホを持ってシャワー室に閉じこもる。
久しぶりにお兄ちゃんの繋がらないトーク画面を開き、メッセージを打つ。
『正体バレそう』
『助けて』
送信っと。
すると、一瞬でついた既読。
「っ、え!?」
思わずスマホを落としそうになり、慌てて手に力を入れた。
どういうこと?
なんで……今?
とりあえず蒼太兄に連絡……!
『蒼太兄』
『どうした?』
『なんか立夏兄と真冬兄にLINEしたら既読ついた』
そうメッセージを送り、一旦シャワー室から出て、脱衣所からタオルを数枚取る。
シャワー室の床に敷いて、簡易お布団の完成!
もう数枚取って、さらに床に重ねていく。
今日はもうここで寝よーっと。
あくびを噛み殺しながらスマホを見る。
あ、蒼太兄からLINE。
『なんて言ってた?』
えぇっと……。
『何も』
『ただ既読がついただけっぽい』
連続でそう送り、また明日ね、と付け足してから眠りについた。