マフィアのお兄ちゃん、探してます
総長室
んん……。
今、何時……?
瞼を擦りながら体を起こす。
「いっつ……」
変な体制で寝ていたからか、体のあちこちが痛む。
「あっ……!」
今日の人質の順番……俺だ。
慌てて月羅にLINEを送る。
『月羅、ごめん。今日の人質俺だから、気づかれないようにシャワー室に来て欲しい』
今は……朝の7時。
髪の毛をかき上げて、ブラシで整える。
丁寧に、時間をかけて変装マスクを創っていく。
マスクをつけたあと、かなり厚めにメイクを重ねた。
仕上げに、唇にほんのりピンク色のリップを塗って完成。
服も着替えて、黒色の目立たないフード付きパーカーを着る。
サイズが3個ぐらい上のを選んだから、かなりだぼだぼ。
月羅から了解!のスタンプが来たのを確認して、こっそりポケットに催涙スプレーを入れる。
太ももの辺りに銃があるのを確かめてから、月羅を待った。
「千秋ー?いるー??」
ノックと共にそんな声が聞こえてくる。
「今開けるね」
そう応えてから、そっと鍵を開けた。
「久しぶり、千秋っ」
ぎゅっと抱きついてきた月羅を慌てて受け止める。
「何あったの……って、聞くのは野暮だよね!」
そう言って笑った月羅に、苦笑いを返す。
「さ、行こっ!」
手を繋いで2人で歩く。
「どこに行きたいの?」
「んーとね、総長室!」
総長室か……なら。
「こっち通った方が近いよ」
月羅の手を引いて、方向転換。
「そうなの?」
不思議そうにしている月羅に、あえて何も言わず進む。
「ねぇ千秋、ほんとはウソでしょ?」
「ん? 何が?」
「ここの道。ほんとは遠回りだよね」
……っ。
心臓がどくんと波打つ。
「そこまでして、みんなに会いたくないの?」
月羅はやっぱり観察眼がすごいなぁ……。
「そうだよ」
ため息をつきながらそう言うと、一瞬嬉しそうに笑った顔を見せた月羅。
「ならさ、ならさぁ……」
月羅が耳に顔を寄せてくる。
「バルーンチャート、入っちゃおうよ」
バルーンチャートに……俺が?
「正直千秋はめちゃくちゃ強いし、入ってくれたらお兄ちゃんたちもきっと入ると思うんだよねぇ〜。こっちとしては一石二鳥!」
あはは……。
でも、俺はやっぱりアールアールなんだよな。
「つーいたっ!」
そんなことを考えている間に、総長室に着いた。
「ありがとう、月羅」
総長室に入るのは初めてだ……!
期待半分、不安半分。
「失礼します。千秋を連れて来ました」
先に月羅がノックをして、総長室に入った。
それから、俺の名前が呼ばれた。
そっとドアを開けて、中に入る。
うっわぁ……!すっご……!
中はめちゃくちゃ豪華。
左には棚。書類がたくさん入ってあって。
右には分厚い本が入った棚。
壁には歴代の総長の写真が飾ってある。
「ごめん、ちょっとここで待ってて?」
月羅はそう言い残して足早に部屋を出て行く。
これは……探索するしか、ない!
傍の棚を開けてみたり、テーブルクロスを捲ったりしていたとき。
ふと机の上を見ると、写真立てがあるのを見つけた。
この写真立て、可愛い……!
あれ、写真入ってる……?
慌てて回り込み、写真を見つめる。
……っ!?
お兄……!?
よく見ると、青色の髪の毛をしていたのは真冬兄だ。
あ、こっちの白メッシュの人は、立夏兄だっ……!
お兄ちゃん2人はアールアールだったと分かり、テンションが上がる。
中央にいるイスに座っている人はピンク色の髪の毛をしている。
……この人が、ボス……?
その左隣には、イスの肘掛けに手をのせてしゃがんでいる赤髪の人。
この人は、かなり幼い顔立ちをしていた。
右隣には、元気そうに笑う立夏兄。
その後ろに、真冬兄。
真冬兄の隣は緑色の髪を後ろで1括りにした人。
柔らかく微笑んでいて、直感的に大人っぽい人だ、と思った。
最後に、そのまた隣に黄色髪の人。
ヤンチャそうな雰囲気的で、前髪をピンで止めている。
あれ?……写真立ての後ろ側になんか書いてある……?
"2×××年、最愛の幹部たちと"
2×××年って……。
つい、去年じゃあ……。
そこまで考えて、ゾッと背筋が凍る。
やばいかも……早くここから出なきゃ!
急いでドアノブに手をかける。
ガチャガチャガチャガチャッ!
っ、開かない……!!
「誰か、開けて!」
ドンドンドンッとドアを叩く。
閉じ込められた……わざと?
どうしよう……総長室は入ったことないから、隠し通路とかわかんないよ……!
どうしよう、どうしよう……っ。
パニックになるな!
パシッとほっぺを叩く。
落ち着け……。
あまり悠長に時間をかけてられない気がする……。
首元のネックレスを握りしめ、壁を手で触りながらぐるりと1周。
目を閉じて、もう1周。
……あ。
ここだけ、壁がへこんでる。
そこをなぞっていくと、キーパッドを発見。
……パスワード。
知らねぇ〜……。
うーん……と頭を悩ませていると、ふわりと甘い香りが立ち込めてきた。
っ!
慌てて口を服の袖で抑え、空気を吸い込まないようにする。
これは……睡眠薬?
出処は、ドアの隙間ってとこかな。
とりあえず……早くここから出なきゃ。
ドアからできるだけ離れたところに座り、ううん……と頭を悩ませる。
ネックレスを触っていると、手が滑ってカシャンッと落としてしまった。
「あっ……」
慌てて拾い上げたとき。
……あれ?
このくぼみ……ネックレスの形と、そっくり……。
恐る恐るくぼみにネックレスを近づける。
……カチッ。
吸い込まれるようにぴたりとはまったネックレス。
すると。
ガコンッと何かが外れるような音がして、ドアが出現。
っ、これしかない……!
ドアを思い切って勢いよく開き、中に飛び込む。
「っ誰だ……!」
カチャリと銃を構える音。
俺によく似た声色が降ってきて。
「お前……まさか」
「っ、え?」
その、声……。
「ちあき……?」
立夏、兄……!?
飛びつこうとした瞬間、目の前がふわりと揺らいだ。
……あれ……。
あ、そういえば、さっき睡眠薬かなんか吸っちゃったんだっけ……?
そのまま俺は薄れゆく意識を手放した。
今、何時……?
瞼を擦りながら体を起こす。
「いっつ……」
変な体制で寝ていたからか、体のあちこちが痛む。
「あっ……!」
今日の人質の順番……俺だ。
慌てて月羅にLINEを送る。
『月羅、ごめん。今日の人質俺だから、気づかれないようにシャワー室に来て欲しい』
今は……朝の7時。
髪の毛をかき上げて、ブラシで整える。
丁寧に、時間をかけて変装マスクを創っていく。
マスクをつけたあと、かなり厚めにメイクを重ねた。
仕上げに、唇にほんのりピンク色のリップを塗って完成。
服も着替えて、黒色の目立たないフード付きパーカーを着る。
サイズが3個ぐらい上のを選んだから、かなりだぼだぼ。
月羅から了解!のスタンプが来たのを確認して、こっそりポケットに催涙スプレーを入れる。
太ももの辺りに銃があるのを確かめてから、月羅を待った。
「千秋ー?いるー??」
ノックと共にそんな声が聞こえてくる。
「今開けるね」
そう応えてから、そっと鍵を開けた。
「久しぶり、千秋っ」
ぎゅっと抱きついてきた月羅を慌てて受け止める。
「何あったの……って、聞くのは野暮だよね!」
そう言って笑った月羅に、苦笑いを返す。
「さ、行こっ!」
手を繋いで2人で歩く。
「どこに行きたいの?」
「んーとね、総長室!」
総長室か……なら。
「こっち通った方が近いよ」
月羅の手を引いて、方向転換。
「そうなの?」
不思議そうにしている月羅に、あえて何も言わず進む。
「ねぇ千秋、ほんとはウソでしょ?」
「ん? 何が?」
「ここの道。ほんとは遠回りだよね」
……っ。
心臓がどくんと波打つ。
「そこまでして、みんなに会いたくないの?」
月羅はやっぱり観察眼がすごいなぁ……。
「そうだよ」
ため息をつきながらそう言うと、一瞬嬉しそうに笑った顔を見せた月羅。
「ならさ、ならさぁ……」
月羅が耳に顔を寄せてくる。
「バルーンチャート、入っちゃおうよ」
バルーンチャートに……俺が?
「正直千秋はめちゃくちゃ強いし、入ってくれたらお兄ちゃんたちもきっと入ると思うんだよねぇ〜。こっちとしては一石二鳥!」
あはは……。
でも、俺はやっぱりアールアールなんだよな。
「つーいたっ!」
そんなことを考えている間に、総長室に着いた。
「ありがとう、月羅」
総長室に入るのは初めてだ……!
期待半分、不安半分。
「失礼します。千秋を連れて来ました」
先に月羅がノックをして、総長室に入った。
それから、俺の名前が呼ばれた。
そっとドアを開けて、中に入る。
うっわぁ……!すっご……!
中はめちゃくちゃ豪華。
左には棚。書類がたくさん入ってあって。
右には分厚い本が入った棚。
壁には歴代の総長の写真が飾ってある。
「ごめん、ちょっとここで待ってて?」
月羅はそう言い残して足早に部屋を出て行く。
これは……探索するしか、ない!
傍の棚を開けてみたり、テーブルクロスを捲ったりしていたとき。
ふと机の上を見ると、写真立てがあるのを見つけた。
この写真立て、可愛い……!
あれ、写真入ってる……?
慌てて回り込み、写真を見つめる。
……っ!?
お兄……!?
よく見ると、青色の髪の毛をしていたのは真冬兄だ。
あ、こっちの白メッシュの人は、立夏兄だっ……!
お兄ちゃん2人はアールアールだったと分かり、テンションが上がる。
中央にいるイスに座っている人はピンク色の髪の毛をしている。
……この人が、ボス……?
その左隣には、イスの肘掛けに手をのせてしゃがんでいる赤髪の人。
この人は、かなり幼い顔立ちをしていた。
右隣には、元気そうに笑う立夏兄。
その後ろに、真冬兄。
真冬兄の隣は緑色の髪を後ろで1括りにした人。
柔らかく微笑んでいて、直感的に大人っぽい人だ、と思った。
最後に、そのまた隣に黄色髪の人。
ヤンチャそうな雰囲気的で、前髪をピンで止めている。
あれ?……写真立ての後ろ側になんか書いてある……?
"2×××年、最愛の幹部たちと"
2×××年って……。
つい、去年じゃあ……。
そこまで考えて、ゾッと背筋が凍る。
やばいかも……早くここから出なきゃ!
急いでドアノブに手をかける。
ガチャガチャガチャガチャッ!
っ、開かない……!!
「誰か、開けて!」
ドンドンドンッとドアを叩く。
閉じ込められた……わざと?
どうしよう……総長室は入ったことないから、隠し通路とかわかんないよ……!
どうしよう、どうしよう……っ。
パニックになるな!
パシッとほっぺを叩く。
落ち着け……。
あまり悠長に時間をかけてられない気がする……。
首元のネックレスを握りしめ、壁を手で触りながらぐるりと1周。
目を閉じて、もう1周。
……あ。
ここだけ、壁がへこんでる。
そこをなぞっていくと、キーパッドを発見。
……パスワード。
知らねぇ〜……。
うーん……と頭を悩ませていると、ふわりと甘い香りが立ち込めてきた。
っ!
慌てて口を服の袖で抑え、空気を吸い込まないようにする。
これは……睡眠薬?
出処は、ドアの隙間ってとこかな。
とりあえず……早くここから出なきゃ。
ドアからできるだけ離れたところに座り、ううん……と頭を悩ませる。
ネックレスを触っていると、手が滑ってカシャンッと落としてしまった。
「あっ……」
慌てて拾い上げたとき。
……あれ?
このくぼみ……ネックレスの形と、そっくり……。
恐る恐るくぼみにネックレスを近づける。
……カチッ。
吸い込まれるようにぴたりとはまったネックレス。
すると。
ガコンッと何かが外れるような音がして、ドアが出現。
っ、これしかない……!
ドアを思い切って勢いよく開き、中に飛び込む。
「っ誰だ……!」
カチャリと銃を構える音。
俺によく似た声色が降ってきて。
「お前……まさか」
「っ、え?」
その、声……。
「ちあき……?」
立夏、兄……!?
飛びつこうとした瞬間、目の前がふわりと揺らいだ。
……あれ……。
あ、そういえば、さっき睡眠薬かなんか吸っちゃったんだっけ……?
そのまま俺は薄れゆく意識を手放した。