マフィアのお兄ちゃん、探してます

倉庫

お昼ご飯を食べ終わったあと、リビングを出て、空き倉庫の中に入る。
空き部屋がないから、倉庫で我慢。
昨日は3人で寝たけど……ちょっときつきつだし。
でもこの倉庫も意外と広々していてね。
なんと2弾構成!
下の段には隅っこにお布団が畳んであって、緑色のもこもこした、クッション式のカーペットが敷いてある。
2段目は折りたたみ式のテーブルと、おサカナ型のラグ。
あとはクローゼット。今日取り返してくる服が掛かる予定。
それと、お兄ちゃんたちからもらった漫画と小説。
最近流行りの漫画と、数年前に流行った小説をもらったんだ!
2人はこの漫画、絵柄が好きじゃなかったみたい……あはは。
小説はただ単に読み終わったかららしい。
立夏兄にないしょでもらったキャンディーを口に放り込み、2階の部分に乗って寝転がる。
そっと漫画を手にして、前回の続きを開く。
えぇっと……このページかな?
のんびりくつろぎながらページをめくっていたときだった。
「っ、あき!」
ふゆ兄の焦ったような声が響いて、ドタバタと廊下を走ってくる音が聞こえてきた。
びくっと体を揺らして、バッと飛び起きる。
普段倉庫の扉は閉めているから、外がどうなっているのかわからない。
がしゃんと乱暴にドアが開け放たれる。
「あき……!ちょっと来い!」
なつ兄に腕を掴まれて、連れていかれるまま廊下を走る。
突き当たりまで来ると、なつ兄は慣れた手つきで壁に触れて、キーパッドを出現させた。
それから何桁もの数字やらアルファベットを打ち込み、顔認証、指紋認証、虹彩認証をクリアすると、床に穴が現れた。
っ、なにこれ……!?
「な……」
「しっ……いいか、よく聞け。多分、奴らにここがバレた」
え……!?
「だから、今ふゆ兄がバリケードとかで食い止めてくれてるはずなんだけど、時期に限界はくると思う」
俺もそう思う……さすがに、1人で何人もを食い止めるのは不可能だ。
「お前にはやってほしいことがあるんだ」
なつ兄は首元のネックレスを外して、俺の首にかけた。
……2つ分。
「その3つを持って、穴に飛び込め。そのまま進むと奥にドアがある。鍵穴にこの形がピッタリはまる穴があるはずだ。全てにネックレスを合わせるとドアが開くシステムになってる」
なつ兄のおでこにはうっすらと汗が滲んでいる。
「その中に入って、ハシゴを登ると外に出られるんだ。そこから蒼太のところに行って、はるの安全を確認してくれ。頼む」
でも……!
そしたら、なつ兄とふゆ兄は……。
すると、なつ兄は怒ったような顔をして、俺のことを穴に向かって突き飛ばした。
「っ、なつにぃ……!」
どんどんなつ兄が小さくなっていく。
風を切る音を耳に入れながら、俺は長い長い穴を落ちていくのだった。
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