天妃物語〜本編後番外編・帰ってきた天妃が天帝に愛されすぎだと後宮の下女の噂話がはかどりすぎる〜
「おい鶯、ちょっと待て」
「なんですか?」
「お前、怒ってないか?」
「…………。……怒ってません」
嘘だ。誰が見ても不機嫌になっている。
黒緋はもう一度問おうとしたが、それを遮るように鶯が萌黄の手を取った。
「行きましょう。あなたを日が暮れる前に送り返さねばなりませんし」
「う、うん」
萌黄は困惑しつつも鶯に手を引かれて歩きだす。黒緋に対する鶯の様子が気になったが、こうして手を引かれて歩けるのは嬉しいのだ。
「ちちうえ」
「……なんだ」
紫紺が不思議そうに黒緋を見上げた。
「ちちうえは、ははうえとけんかしたのか?」
「それは俺が知りたいんだが」
黒緋は首を傾げた。
そんな父上に紫紺も首を傾げる。母上が父上のことが大好きなのは紫紺もよく知っているのだ。
二人は顔を見合わせたが、先を歩いていた鶯が振り返って手招きする。
「紫紺、あちらに鹿のあかちゃんがいますよ」
「え、しかのあかちゃん!? オレもみる!」
紫紺が無邪気に鶯に駆け寄った。
鶯が指さした方を見て楽しそうにはしゃいでいる。とても楽しそうだ。
「……子どもとは羨ましいものだな」
「ばぶっ。あいあー! あー!」
抱っこしている青藍が自分も行きたいと鶯に向かって身を乗り出す。
腕から落ちそうになる青藍を黒緋が抱きなおした。
「分かっている。お前にも見せてやるから暴れるな。ほらあそこだ」
「あぶぶっ。あーあー!」
「そうだ。鹿だ」
「せいらんとおんなじだ! あかちゃん!」
「あいっ。あいあ〜」
青藍が嬉しそうにはしゃいだ。
兄上ぶる紫紺に黒緋がニヤリとする。
「お前だって似たようなものだろう」
「オレはもうあかちゃんじゃない! あにうえだ! な、ははうえ? そうだよな!?」
「ふふふ、そうですね。紫紺は立派な兄上です」
「しかもつよいんだ!」
「はい。とっても強いです」
鶯も楽しそうに言った。
無邪気にはしゃいでいる子どもたちの姿に嬉しそうだ。
鶯が嬉しいと黒緋も嬉しい。
「なんですか?」
「お前、怒ってないか?」
「…………。……怒ってません」
嘘だ。誰が見ても不機嫌になっている。
黒緋はもう一度問おうとしたが、それを遮るように鶯が萌黄の手を取った。
「行きましょう。あなたを日が暮れる前に送り返さねばなりませんし」
「う、うん」
萌黄は困惑しつつも鶯に手を引かれて歩きだす。黒緋に対する鶯の様子が気になったが、こうして手を引かれて歩けるのは嬉しいのだ。
「ちちうえ」
「……なんだ」
紫紺が不思議そうに黒緋を見上げた。
「ちちうえは、ははうえとけんかしたのか?」
「それは俺が知りたいんだが」
黒緋は首を傾げた。
そんな父上に紫紺も首を傾げる。母上が父上のことが大好きなのは紫紺もよく知っているのだ。
二人は顔を見合わせたが、先を歩いていた鶯が振り返って手招きする。
「紫紺、あちらに鹿のあかちゃんがいますよ」
「え、しかのあかちゃん!? オレもみる!」
紫紺が無邪気に鶯に駆け寄った。
鶯が指さした方を見て楽しそうにはしゃいでいる。とても楽しそうだ。
「……子どもとは羨ましいものだな」
「ばぶっ。あいあー! あー!」
抱っこしている青藍が自分も行きたいと鶯に向かって身を乗り出す。
腕から落ちそうになる青藍を黒緋が抱きなおした。
「分かっている。お前にも見せてやるから暴れるな。ほらあそこだ」
「あぶぶっ。あーあー!」
「そうだ。鹿だ」
「せいらんとおんなじだ! あかちゃん!」
「あいっ。あいあ〜」
青藍が嬉しそうにはしゃいだ。
兄上ぶる紫紺に黒緋がニヤリとする。
「お前だって似たようなものだろう」
「オレはもうあかちゃんじゃない! あにうえだ! な、ははうえ? そうだよな!?」
「ふふふ、そうですね。紫紺は立派な兄上です」
「しかもつよいんだ!」
「はい。とっても強いです」
鶯も楽しそうに言った。
無邪気にはしゃいでいる子どもたちの姿に嬉しそうだ。
鶯が嬉しいと黒緋も嬉しい。