天妃物語〜本編後番外編・帰ってきた天妃が天帝に愛されすぎだと後宮の下女の噂話がはかどりすぎる〜
「ふふふ、二人とも楽しそうですね。あんなに嬉しそうに」
紫紺が萌黄の手を引っ張って連れていこうとしているが、青藍は逆方向を指差してあっちへ連れていけとねだっていた。
「もえぎ、こっちだ! こっちにウサギがいたぞ!」
「あぶっ、ばぶぶ〜!」
「まって、まってください。順番でお願いします〜っ」
萌黄を困らせている二人の子ども達を見て鶯はおかしそうに笑う。
それは一切の憂いを感じさせない心からの笑顔だった。
とても幸せなのだと伝わってくる笑顔は黒緋を温かな気持ちにする。鶯が黒緋の笑顔を望んでくれるように、黒緋も鶯のそれを望んでいるのだから。
しかし今の笑顔は紫紺と青藍の存在が与えたもので、黒緋が与えたものではない。
「黒緋様、そろそろ行きましょうか」
「そうだな。そうしよう……」
黒緋は優しく笑いかけた。
すると鶯は頬を赤らめて瞳を甘く輝かせる。それは恋を伝えるものだ。鶯はたしかに黒緋を愛してくれている。
黒緋もまた鶯を深く愛しているが、でもそれは同じように伝わっているだろうか。
黒緋は内心考えるが、鶯は行きましょうと三人に向かって歩いていく。
「紫紺、青藍、あまり萌黄を困らせてはいけませんよ?」
「ははうえ!」
「あうあ〜」
「鶯、たすけて……」
鶯の姿に紫紺が嬉しそうに駆け寄って、青藍がこんどは鶯を指差して連れていけとねだる。
ようやく二人の希望が一致してくれて萌黄はほっとひと安心だ。
「萌黄、ありがとうございました。おかげでゆっくり休めましたよ」
「よかった。鶯はなんでも一人でしようとするから」
「そんなことありませんよ」
「ほんとかなあ?」
萌黄が疑いの目で鶯を覗きこむ。
鶯は「ほんとですよ」と顔を寄せてきた萌黄の額をちょんっと指で押した。
紫紺が萌黄の手を引っ張って連れていこうとしているが、青藍は逆方向を指差してあっちへ連れていけとねだっていた。
「もえぎ、こっちだ! こっちにウサギがいたぞ!」
「あぶっ、ばぶぶ〜!」
「まって、まってください。順番でお願いします〜っ」
萌黄を困らせている二人の子ども達を見て鶯はおかしそうに笑う。
それは一切の憂いを感じさせない心からの笑顔だった。
とても幸せなのだと伝わってくる笑顔は黒緋を温かな気持ちにする。鶯が黒緋の笑顔を望んでくれるように、黒緋も鶯のそれを望んでいるのだから。
しかし今の笑顔は紫紺と青藍の存在が与えたもので、黒緋が与えたものではない。
「黒緋様、そろそろ行きましょうか」
「そうだな。そうしよう……」
黒緋は優しく笑いかけた。
すると鶯は頬を赤らめて瞳を甘く輝かせる。それは恋を伝えるものだ。鶯はたしかに黒緋を愛してくれている。
黒緋もまた鶯を深く愛しているが、でもそれは同じように伝わっているだろうか。
黒緋は内心考えるが、鶯は行きましょうと三人に向かって歩いていく。
「紫紺、青藍、あまり萌黄を困らせてはいけませんよ?」
「ははうえ!」
「あうあ〜」
「鶯、たすけて……」
鶯の姿に紫紺が嬉しそうに駆け寄って、青藍がこんどは鶯を指差して連れていけとねだる。
ようやく二人の希望が一致してくれて萌黄はほっとひと安心だ。
「萌黄、ありがとうございました。おかげでゆっくり休めましたよ」
「よかった。鶯はなんでも一人でしようとするから」
「そんなことありませんよ」
「ほんとかなあ?」
萌黄が疑いの目で鶯を覗きこむ。
鶯は「ほんとですよ」と顔を寄せてきた萌黄の額をちょんっと指で押した。