天妃物語〜本編後番外編・帰ってきた天妃が天帝に愛されすぎだと後宮の下女の噂話がはかどりすぎる〜
「あぶぶ〜っ」
「青藍、邪魔をしてはいけません。父上と兄上は手合わせをしているのです」
「ぶーっ」
「ぶーではありません。あなたは私といてください」
鶯が後ろからひょいっと抱き上げて膝の上に戻した。
そうすると青藍は不満そうな顔になり、短い手足をジタバタさせてなんとかハイハイで脱出しようとする。もちろん鶯が逃がすはずがない。
「あうーっ、あうーっ」
「ダメですってば。父上と兄上は遊んでいるわけじゃないんですから」
「うっ、うっ……うぅ」
青藍の瞳がうるうる潤みだす。
今度は思い通りにならなくて泣くしかないと思ったようだ。
こうしていると黒緋と紫紺が向かい合って礼をした。手合わせが終わったのだ。
木刀を握っている間は礼儀正しく振る舞った紫紺だが、休憩になった途端に見守っていた鶯のところに駆け寄った。
「ははうえ! みてたか!? オレ、つよくなっててびっくりした!?」
「ふふふ、びっくりしましたよ。よく鍛えています」
鶯が褒めると紫紺は誇らしげな顔になる。
でも涙目の青藍に気づくと呆れた顔になった。
「せいらん、またないてるのか」
「あう〜」
「そんなにないてたら、なきむしになるぞ?」
「心配するな、青藍はもう立派な泣き虫だ」
黒緋がそう言いながら渡殿にあがった。
もちろん鶯の隣に腰を下ろす。
「鶯、お前もそう思うだろ?」
「どうでしょう。赤ちゃんは泣くものですから」
鶯はクスクス笑って答えた。
実際、青藍は泣き虫である。しかも怖がりで甘えん坊だ。猫がしげみから出てきただけで泣くこともあるし、食べていたおやつがなくなっても泣いていた。
鶯は側に控えている側近女官に「あれを」と命じる。すると側近女官は「畏まりました」と両手をついて頭を下げ、さらに控えていた女官に命じた。
天妃と直接言葉を交わせるのは側近の上級女官だけで、それより位が下がると天妃から話しかけた時でなければ直接言葉を交わすことは許されないのだ。
鶯が命じてからすぐに女官が戻ってきた。
手には朱塗りの台盤を持ち、その上の盤には甘い餅菓子が乗っている。鶯が命じたのだ。
「青藍、邪魔をしてはいけません。父上と兄上は手合わせをしているのです」
「ぶーっ」
「ぶーではありません。あなたは私といてください」
鶯が後ろからひょいっと抱き上げて膝の上に戻した。
そうすると青藍は不満そうな顔になり、短い手足をジタバタさせてなんとかハイハイで脱出しようとする。もちろん鶯が逃がすはずがない。
「あうーっ、あうーっ」
「ダメですってば。父上と兄上は遊んでいるわけじゃないんですから」
「うっ、うっ……うぅ」
青藍の瞳がうるうる潤みだす。
今度は思い通りにならなくて泣くしかないと思ったようだ。
こうしていると黒緋と紫紺が向かい合って礼をした。手合わせが終わったのだ。
木刀を握っている間は礼儀正しく振る舞った紫紺だが、休憩になった途端に見守っていた鶯のところに駆け寄った。
「ははうえ! みてたか!? オレ、つよくなっててびっくりした!?」
「ふふふ、びっくりしましたよ。よく鍛えています」
鶯が褒めると紫紺は誇らしげな顔になる。
でも涙目の青藍に気づくと呆れた顔になった。
「せいらん、またないてるのか」
「あう〜」
「そんなにないてたら、なきむしになるぞ?」
「心配するな、青藍はもう立派な泣き虫だ」
黒緋がそう言いながら渡殿にあがった。
もちろん鶯の隣に腰を下ろす。
「鶯、お前もそう思うだろ?」
「どうでしょう。赤ちゃんは泣くものですから」
鶯はクスクス笑って答えた。
実際、青藍は泣き虫である。しかも怖がりで甘えん坊だ。猫がしげみから出てきただけで泣くこともあるし、食べていたおやつがなくなっても泣いていた。
鶯は側に控えている側近女官に「あれを」と命じる。すると側近女官は「畏まりました」と両手をついて頭を下げ、さらに控えていた女官に命じた。
天妃と直接言葉を交わせるのは側近の上級女官だけで、それより位が下がると天妃から話しかけた時でなければ直接言葉を交わすことは許されないのだ。
鶯が命じてからすぐに女官が戻ってきた。
手には朱塗りの台盤を持ち、その上の盤には甘い餅菓子が乗っている。鶯が命じたのだ。