天妃物語〜本編後番外編・帰ってきた天妃が天帝に愛されすぎだと後宮の下女の噂話がはかどりすぎる〜
「気を使っていただいてありがとうございます。でも、あなたらしくありませんね」
「お前のことだ。慎重にもなる」
「私のことだから……?」
「愛してるんだ。当然だろ」
「っ……」
鶯は扇をあげてまた顔を隠した。
もうどうしようもなく赤くなっている。
黒緋があまりにも当たり前のことのように言うので困惑すらしている。
「……いいんですか、そんなこと言って。地上の話はひと晩では終わりませんよ?」
「簡単に終わらせるなよ。俺はすべて聞きたいんだ。まず扇を下ろして顔を上げろ。顔が見たい」
「無粋な言い方ですね」
「無粋は承知だ。だが待てない」
「黒緋様……」
鶯がそろそろと扇を下ろした。
すると近い距離で目が合って、黒緋がなんとも幸せそうに目を細める。
「愛してるぞ。何度でも言う、お前だけだ」
「ありがとうございます。私もあなただけです」
「愛してるんだ」
「ふふふ、そう何度も言われると恥ずかしいですね」
「我慢してくれ。何度でも言いたいんだ。お前が安心するまで。いや、安心してからも」
「なんですか、それ」
鶯がクスクス笑う。
黒緋は「本気だぞ」と真剣な顔で言う。
鶯は黒緋に握られていた手をするりと抜くと、扇を閉じて前に置く。そして居住まいを正して両手をついた。
「それでは手始めに、私が初めて覚えた舞をお見せしましょう」
「それは是非」
「ふふふ、そうでしょう?」
鶯はそう言うと扇を持ってゆっくり立ち上がった。
渡殿の舞台で舞いを披露する。
その舞は鶯が子どもの時に必死に覚えた舞だった。
雪が降る寒い冬も、うだるような暑い夏の日も、休むことなく厳しい稽古を続けたのだ。
斎宮で白拍子として生きていくために、斎王を守るために、身につけなければならないものだった。他にも琴や琵琶や笛など多くの舞楽を身に着けたのだ。
その初めて覚えた舞を黒緋に見てもらえるなんて、鶯にとってこれほど嬉しいことはない。
その気持ちはもちろん黒緋にも伝わっている。
こうして月明かりの下で鶯は舞い、黒緋との甘やかな時間をすごすのだった。
「お前のことだ。慎重にもなる」
「私のことだから……?」
「愛してるんだ。当然だろ」
「っ……」
鶯は扇をあげてまた顔を隠した。
もうどうしようもなく赤くなっている。
黒緋があまりにも当たり前のことのように言うので困惑すらしている。
「……いいんですか、そんなこと言って。地上の話はひと晩では終わりませんよ?」
「簡単に終わらせるなよ。俺はすべて聞きたいんだ。まず扇を下ろして顔を上げろ。顔が見たい」
「無粋な言い方ですね」
「無粋は承知だ。だが待てない」
「黒緋様……」
鶯がそろそろと扇を下ろした。
すると近い距離で目が合って、黒緋がなんとも幸せそうに目を細める。
「愛してるぞ。何度でも言う、お前だけだ」
「ありがとうございます。私もあなただけです」
「愛してるんだ」
「ふふふ、そう何度も言われると恥ずかしいですね」
「我慢してくれ。何度でも言いたいんだ。お前が安心するまで。いや、安心してからも」
「なんですか、それ」
鶯がクスクス笑う。
黒緋は「本気だぞ」と真剣な顔で言う。
鶯は黒緋に握られていた手をするりと抜くと、扇を閉じて前に置く。そして居住まいを正して両手をついた。
「それでは手始めに、私が初めて覚えた舞をお見せしましょう」
「それは是非」
「ふふふ、そうでしょう?」
鶯はそう言うと扇を持ってゆっくり立ち上がった。
渡殿の舞台で舞いを披露する。
その舞は鶯が子どもの時に必死に覚えた舞だった。
雪が降る寒い冬も、うだるような暑い夏の日も、休むことなく厳しい稽古を続けたのだ。
斎宮で白拍子として生きていくために、斎王を守るために、身につけなければならないものだった。他にも琴や琵琶や笛など多くの舞楽を身に着けたのだ。
その初めて覚えた舞を黒緋に見てもらえるなんて、鶯にとってこれほど嬉しいことはない。
その気持ちはもちろん黒緋にも伝わっている。
こうして月明かりの下で鶯は舞い、黒緋との甘やかな時間をすごすのだった。